至上の言葉

 


 

どうしてそんなことを口にしてしまったのか。

「俺と世界とどちらかを選べと言われたら、どっちを取る?」

だなんて。
そんな、女の戯れ言のようなこと――。
おまえを困らせるつもりなど、無かったのに。

自分を取り繕うように、俺は続けて言った。

「おまえは、迷うことなく、世界を選ぶんだろうな」

わずかに眉を寄せ、おまえは哀しげに俺を見た。
俺は微笑(わら)った。

「たとえどれ程、俺を愛してくれていても、おまえは、おまえにすがる者たちを捨てられない。俺は、そんなおまえを、エドガー。そんなおまえだから――」

おまえの蒼い眼が、俺を凝視する。

「そんなおまえが……俺は、哀しくて愛おしい――」

「……セッツァー」

おまえは泣き出しそうな笑顔で、俺の背を優しく抱いた。

「セッツァー。もしもそんな時が来たら……セッツァー……私は君を、一人で逝かせはしないから――」

至上の言葉。
おそらくは、最初で最後の――。

エドガー。
おまえは、きっと知らない。
たとえ気休めに過ぎなくても、そう言ったおまえのためになら、俺は簡単に世界と引き替えに出来るのだと――。
 

 


 

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