白と黒 そして赤

 


 

空気を切り裂く音が頬をかすめる
目の端で白いマントが翻る
荒い息づかいが…夕べの痴態に似てる…

振り向かなくても俺には見える
しなやかに腕を伸ばし
エアアンカーを打つお前の姿が…
波打つ金糸、上気した頬、汗ばんだ額
舞う様に戦うお前の姿が…

シーツの代わりに白きマントを身に纏い
俺の腕の中で舞う姿に似て…


「セッツァーーーっ」
エドガーの声と同時にスロットはスリー7。蒼白い炸裂の中でモンスターは消滅し死闘は終わった。
「大丈夫か!?」
「ああ、大した事ねえよ。」
が、支えられる様に起きあがっりかけたセッツァーは、眉を顰めエドガーを突き飛ばした。
「セッツ……」
「ちっ 汚しちまった…」
彼の黒いマントの袖口から滴り落ちた物が、エドガーのマントに幾つもの鮮やかな赤を咲かせていた。
「わーー傷男、凄い血ーー。ヤバイよーケアルもポーションも全部切れちゃってるーー。」
「す 直ぐに止血をっ」
「触るなっ。マントが汚れる。」
「馬鹿っ、こんな時に私のマントの事なんてどうでもいいっ。」
「白いマントじゃ、汚れは落ちねえだろがっ」
「ああ 判ったっ、今度から君と同じ黒にするよっ。どんなに血が出ても判らないよにねっ。」
止血用に白いマントを切り裂くエドガーの、その目元に滲む物を見定めると、満足そうにセッツァーは囁いた。
「黒も悪くはねえが、お前が一番似合うのは白だな。清潔な純白のシーツが、エドガー…お前には一番似合う。」
「……」
エドガーは恋人の腕を止血帯で思いっきり絞め上げた。


白いマントで舞う様に戦うお前が好きだから
どんな激しい戦闘でも、塵一つ、シミ一つ付けさせやしねえ
モンスターの血なんて言語道断
誰にもお前を汚させはしねえ……
……でも、まあ俺の血で汚れるならいいか…
汚れを黒で隠してる様な俺を、お前は受け入れてくれたのだから…


「ねえ 赤いマントと赤いコートにすればいいじゃん。」
赤いフードのリルムが呟いた。



 

Back