「なぁ〜、兄貴〜、たまには休まねーと、今に体壊すぜ〜?」
「・・・ああ、そうだな」
兄の身体を心配するマッシュの言葉が、聞こえてはいるようだが、
エドガーの視線が目の前の書類から離れる事はなかった。
「・・・ったく・・・」
マッシュは、ため息をつくと、エドガーの執務机のそばのソファに、乱暴に腰掛ける。
『あの戦い』から数ヶ月。ようやく、全ての町の復興が完了しようとする頃、
最後に残った『王国』の『国王』であるエドガーは、日々、次から次へと届けられる、大量の書類に埋もれていた。
その処理による寝不足を、目の下の隈が物語っている。
そして、決して、表には出さないが、本来、エドガーは長時間のデスクワークは得意ではない。
双子の弟であるマッシュから見れば、エドガーが相当のストレスを感じているという事は明白だった。
マッシュが、もう一度、大きなため息を吐こうとした瞬間
「陛下っ!」
突然、バタンっという、大きな音と共に、
白い封筒を手にした大臣が部屋に入ってきた。
「なんだ?騒々しい」
眉間に皺をよせながらも、エドガーの視線は、尚も書類から離れない。
「先程、こんなモノがっ!」
ようやく書類から視線を離し、大臣が差し出した、封筒は、どうやら手紙らしい。
エドガーがガサガサと手紙を開けると、
「なんだって?」
と、マッシュも立ち上がり、その手紙を覗き込んだ。
「えっと・・・
『お宅の王様、嫁さんにするから さらいにいくぜ
さすらいのギャンブラー』・・・・?」
「・・・・」
「・・・・」
一瞬の沈黙が流れる。
「なんか・・・どこかで見たような文章だな・・・」
エドガーとマッシュ、どちらともなく呟いた。