final fantasy VI
『あなたのためにできること』
前書きに代えて
書くの止めた。
あ、でも書いちゃった。なら、封印しよう。
……と云いつつ、何故かサイトにアップする気になったSSです。
内容、かなりひねくれてます。
封印しようと思ったくらいですから、暗いです(暗いと云うよりは、難解)。
では、どうぞ。
経過した時間の長さを物語る様に黄ばんでしまっている。
のたうつ蛇の様な、掠れて読めない文字の書かれた、一枚の長い紙を剥いで。
何処か煤けている、埃を被った、その壷の蓋を開けてみる。
そして、覗き込んでみる。
封印を取り去り、蓋をこじ開け、覗き込んだ壷の中には、風景がある。
太い四つ辻で、沢山の、沢山の人が行き交う、そんな風景。
幾百だろうか。幾千だろうか。
数え切れない程の人々が、その四つ辻を、行き交っている。
風景の中の者達の顔は、一つ一つの判別が付かない。
唯、人の形を取る、黒い固まりの様にも見える。
蠢く黒い影だけが、滞る事なく行き過ぎる。
沢山の者達が行き過ぎる、四つ辻の直中。
道と道とが交差する、その中心点。
唯、一人佇む彼がいる。
行き過ぎる者達を、見遣るでなく。
行き過ぎる者達に、見られるでもない。
彼は唯、佇んでいる。
灰色に濁った天空へと面を向け。
が、行き過ぎる人達を見遣るでないのと同様、その瞳に何も映す事なく。
幾百も、幾千も、現れては消える人達が、確かに居る中で。
彼は唯一人で。
そして、孤独、で。
彼には何も出来ない。
沢山の人々が、四つ辻には溢れているのに。
そんな直中ですら、否、人々が溢れる直中だからこそ、孤独である彼に、出来る事などない。
地に足が縫い止められているかの様に、動く事も出来ず、逃げる事も出来ず、己が足を切り落とす事も出来ない彼だから。
上向く事しか、ないから。
彼に出来る事は、たった一つ。
上向いた先にある、濁った灰色の空が。
不意に、見た事もない様な青さを湛え、彼の瞳に映る時。
見た事がない程青い空を『識る』時。
やって来るだろう、人を待ち続けるだけ。
彼にとって、唯一、『識る』事の出来る人を、唯、待つだけ。
できることは、それだけ。
経過した時間の長さを物語る様に黄ばんでしまった。
のたうつ蛇の様な、掠れて読めない文字の書かれた、一枚の長い紙を剥ぎ。
何処か煤けている、埃を被った、その壷の蓋を開けてみた。
そして、覗き込んでみた。
そこに居たのは、彼。
四ツ辻の直中に、孤独に苛なまされ、立ち続ける彼。
それが、『貴方』の姿。
本当の、『貴方』の姿。
──見てしまった、原風景。
立ち続けるしかない貴方。
待ち続けるしかない貴方。
そこに居たのは、そんな貴方。
『僕』はそれを知ってしまった。
立ち続ける貴方。
待ち続ける貴方。
孤独な、貴方。
貴方の為に何かがしたい。
貴方をそこから救い出したい。
何時か、貴方を迎えに行きたい。
けれど。
あなたのためにできること。
それが『僕』には判らない。
END
後書きに代えて
……これが、FF6のSSである必要はあるのか、と私自身物凄く疑問に思いますが。
でも、多分、きっと、FF。
内容はひねくれてますが、『貴方』が誰で、『僕』が誰、かは、ストレートに解釈してやって下さい(って、私にしか判らなかったらどうしよう……)。
宜しければ、感想など、お待ちしております。