final fantasy VI
『a nude picture』

 

前書きに代えて

 

 ふと、裸体を思って(……こう書くと、何か危ない……)、書いてみたお話です。
 多分、私の発作の一つだと思うんですが。
 では、どうぞ。

 

 

 何も彼もを手にした『彼』の、その姿を見ていると。
 男のそれと女のそれとを比べようと思うのが、端からの間違いだと、そんな事は判っていても。
 時折、その紫紺の瞳に焼きつけて来た数多の女達の裸体と、眼前の『男』の裸体を、比べてみたくなる瞬間が、セッツァーにはある。
 例え、どんなに造作が美しくても。
 その造作が、男に有らざるとか、男としては相応しくない、と云った表現が似合うとしても。
 持って生まれた、男、と云う性は変えようも誤魔化しようもないから。
 所詮、『彼』の躰は、何処までも『男』のそれで、一見、なだらかに見える躰の曲線も、その節々も、女人と比べてしまえば丸みは足りず。
 直線的、と表現した方が相応しいだろうし。
 しっとりとした手触りの、きめ細かい肌も、男と云う事実を鑑みれば、シルクの様な、と云う表現を用いる事は許されるのだろうが、やはり、女性のそれと比較してしまえば、彼が男である事を、意識せずにはいられない肌なのだと思う。
 ……が。
 それでも。
 自分自身にもどうしようもない程、彼に惚れてしまっていると云う『欲目』を完全に差し引いたとしても。
 この裸体からは時折……立ち篭める程の色香を、感じる事がある、と。
 セッツァーは、思う。
 夜着の帯の結びを緩めて、襟元を、肘よりも下げ、白磁の肌が、肩口から胸元に掛けて露になった事を。
 何処か、恥じらう風にしている様は、何年も前、こちらの正体が空賊とは知らず、全てを投げ出した深窓の令嬢よりも、楚々と映る。
 なのに。
 重なりの乱れた衣装の裾から覗かせた、すらりとした脚を。
 少しずつ、誘う様に、が、無意識に、ゆるゆると開いて行くさまは、花街で一番、と称される娼婦の手管よりも、色気を感じた。
 恥じらいと誘いを混在させた趣きで、『彼』が夜着を脱ぎ捨てれば。
 長い金の髪で以て疎らに隠される、背から腰に掛けての反りは、落とされた光源の閨の中、白く浮かび上がり。
 その肩を強く掴んで。
 流れる金髪を乱して。
 白い布の海に、確かに男の、けれど女よりも艶かしい裸体を、セッツァーは押し倒さずには、いられなくなる。
 楚々とした『彼』と。
 乱れてくれるのだろう期待を感じられる『彼』とを。
 味合わせて欲しくなる。
 手を伸ばしてはいけない裸体画の様な、『完璧』な彼を。
 こちら側の世界に、貶めてみたくなる。
 確かに『男』の躰を持った。
 そして『男』の心を持った。
 けれど……むせ返る程の色香を漂わせる彼。
 ──カンバスに描かれた、完璧な裸体画の如く、温度を感じられない彼に。
 熱さを持たせてみたくなる。
 腕の中で、綺麗に踊らせて。
 彼が、人であり、己が恋人であり、最愛の人であると。
 感じてみたくなる。
 彼を貶められるのは、己唯一人なのだと……優越感を、得たくなる。
 彼を、こうさせているのは自分だと。
 彼を、こうさせてしまったのは自分だと。
 甘さも、痛みも……何も彼も。
 セッツァーは、『彼』の裸体から汲み上げる。
 『男』であるのに。
 時に、『女』にも勝る。
 一枚の絵に収められた様な『彼』の全てを、手にしているのだと。
 そう感じられる瞬間は、セッツァーにとって、至福の時以外の何ものでもない。
 

 ──けれど。
 本当は彼にも、良く判っている。
 こうした夜の始まりは、何時も。
「……セッツァー…。私を……────」
 『彼』の、そんな台詞からでしか始まらない事が。
 セッツァーには、良く、判っている。

  

END

 

 

 

後書きに代えて

 

 ……いや、その……。エドガーの裸体って、綺麗だろうな、と云う所から出発した話なのですが(ドリーム)。
 えーと……(←書いた本人も、ちとコメントに困る、の図)。
 この話の中で云いたいことって、結構あったりしなくもないのですが……一見、だからどうした、って話かも……。ま、いいです、これのコンセプトは元々、陛下ってば綺麗、ですから(笑)。
 宜しければ、感想など、お待ちしております。

 

 

 

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