Final Fantasy VI
『「実際にゲームに登場するアイテムを使って小話を書いてみよう」なMyお題に基づくプチ話 セツエド編』
その日、彼、セッツァー・ギャビアーニは、少しばかり頭が重かった。
前日、仲間達と共に傾れ込んだ宿屋の直ぐ近くに、綺麗処が沢山働いている酒場があると知り、うっかり足を運んだ挙げ句、確かに評判通り、別嬪揃いだった女衆と一緒になって、明け方近くまで飲んでしまって、だから。
底なしなまでに酒に強い彼のこと、二日酔い……、という訳ではないのだけれど、何処となく頭は重く、思考には、うすらぼんやり霞が掛かっていた。
故に。
己とエドガー・ロ二・フィガロ以外の姿が消えた、静かな宿屋の一室で、そのエドガーと向かい合っていても、目の前の彼が何をしているのか、セッツァーには中々飲み込めなかった。
……だが、どんなに頭が重くとも、どれだけ思考が緩くとも、人間、時刻の経過と共に『状況』は理解出来るようになるし、気になり始めもするので。
「……エドガー? お前、何やってる?」
漸く、眼前の彼がしていることを理解し、且つ、興味も覚えたセッツァーは、心赴くままにエドガーに問うた。
「何って、見れば判るだろう?」
彼の問いへ、エドガーは、にっこり微笑みつつ答えながらも、やっと、オツムに血が回り始めたか、と言わんばかりの眼差しを向けた。
「そりゃ判るが。お前が握ってるのは、この間、シャドウがコロシアムで手に入れてきたオーガニクス以外の何物でもないからな。……だから。俺が訊きたいのはそういうことじゃなくて。何で、そんな物を弄ってるかってことだ」
「……知りたいかい?」
にっこりにこにこ、その辺の女なら幾らでも落とせそうな魅力的な笑みを浮かべつつ、目だけは笑っていないエドガーは、何のつもりか剣を弄っていて、何でそんなことを、と問いを放ったセッツァーと、彼の方へと少しばかり身を乗り出したエドガーの二人は、朝の挨拶を交わすようなノリで会話を続け。
「……そりゃ、まあな。何処となく、身の危険を感じるからな」
「おや。やはり、勘だけはいいね、セッツァー。──この剣は、扱う者の魔法力と引き換えに、強烈な一撃を『敵』にお見舞いしてくれるのは、君も知っての通りだ。………………夕べは、随分とお楽しみだったらしいね。少し前に、夕べ、君が侍らせてたLady達の一人が、君を訪ねて来たよ。今日、君と、昼間っから、『いいこと』をする約束をしたから迎えに来た、と言ってね」
もしかして、今、こいつは、滅茶苦茶ご機嫌斜めじゃないか……? と顔引き攣らせたセッツァーに、エドガーは、にーーーー……っこり、笑み深めつつ、一層身を近付け。
「申し訳ないとは思ったけれど、君は未だ休んでいるからと、件のLadyにはお帰り頂いたけれども。……セッツァー?」
「……エドガー。一寸待て、誤解だ」
「誤解? 何が? 誤解だと言うなら、君が夕べ、あのLadyと約束した、『いいこと』とやらの中身に付いて、弁明してくれると嬉しいのだけれどもね」
────次の瞬間。
セッツァーは、激しく椅子鳴らせて立ち上がり、エドガーは、両手で弄んでいたオーガニクスを盛大に振り被った。
END
後書きに代えて
2010.01〜2011.07の拍手小説です。
弁明の余地もない……。
──タイトル通りの小話です(笑)。
セッツァーさん、浮気疑惑。浮気はしてません。うちの彼には出来ません(笑)。一寸、エドガーさんが乙女になった…………。
──宜しければ、感想など、お待ちしております。