final fantasy VI@第三部
『添付ファイル』

 

前書きに代えて

 

 前書きと云いますか(笑)。
 単に、この話は、『a scandal』の中で盗み聴かれていた彼等の「ヤバイこと」の一つを、一寸小説チックではない雰囲気で、書いてみただけものなのです。
 なので、タイトルは、『添付ファイル』。
 情報公開してみましょう、と云うことで(笑)。
 では、どうぞ。

 

 

 

 (再生)

 (映し出されたその室内の様子──レースのカーテンだけが閉められた、ベランダに面した大きな窓。皮張りの、数人掛けと思しきソファ。余り背の高くないテーブル、それらが確認出来る。明確に、人物を特定出来る影はない。が、想像される全長の、三分の一程が映し出されたソファの上に、横たわっているらしい人間の足は映っている)

 ……セッツァーっ……。駄目だってばっ……。出掛けるって約束だったろうっ……──。
 出掛ける? そうだったか?

 (ソファの革の上で、衣服が滑る音。タン、と何かを何かが叩く音と、カシャンと、陶器が跳ねる音。青年らしき二人の人物のやり取りに被さる。人物達の姿は、足先を除き、画面にはない)
 (画面中央。ソファの上の足が、足掻くような動きを見せる。起き上がろうとしているのか、爪先が床へと降りる。が、床に触れた途端、別の人物の物らしき腕が伸び、降りたばかりの足先を絡げ取って、元の姿勢に戻す)


 セッツァーっ! 何を考えているんだっ! こんなに明るい時間から、君の劣情に付き合うつもりなんて、私にはないっ!
 気にするな、エドガー。その内、付き合いたくなるから。

 (エドガー、と呼ばれた人物と、セッツァー、と呼ばれた人物の声の音量が増す。言い合いをしている雰囲気。その間も室内には、衣擦れの音が、微かに響いている。──横たわった足先がぴくりと曲げられ、添えられたままの腕が、ゆったりとしたパンツの裾を、上へと持ち上げて行く)

 ……いい加減にしろって云ってるのが、判らないのか、君はっ! 随分前からの約束だったのにっ。買い物に付き合うって……。──あ……。……セッ…セッツァーっ!!
 う・る・さ・い。……あのなあ、今日はたまたま、世間様も休日なんだ。そんな日に、わざっわざ、身動き出来なくなる程混雑するショッピングモールなんぞに、行く必要はないだろ? 日を改めろ。付き合わないって云ってる訳じゃねえんだから。
 だけどっ。今日を逃したら、又当分、私は忙しくて……。──だーかーらー……っっ。昼間っから、何処を触ってるんだ、君はっ! 脱がせるなってばっっ。
 ……………云って欲しいのか? 何処触られたか。
 違うっ! 
 ああ、なら、自分で脱ぐのか? そうか、そうか。ちったあお前も、積極的になる覚悟が出来たか。
 こっ……の……。恥知らずっ! 色魔っ!
 あー、聞き飽きた、聞き飽きた。…あのなあ、エドガー。お前の恥じらう姿ってのは、そりゃーあ、そそるんだが。いい加減な、『こうなって』間もないって訳でもねえんだから。少しは自分から……──。
 セッツァァァァァっ!!

 (画面に映る足先と、そこに添えられた腕が蠢く中、暫し続くやり取り。その一瞬の後、『エドガー』が、『セッツァー』を、叩いたと思しき甲高い音)

 おっまえ……。引っぱたくこたぁねえだろうがっ! そんなに俺に、実力行使をさせたいかっ。
 してるだろうっ、最初っからっ。強引にっっ!
 ほーお。なら、遠慮は止めるとするか。
 遠慮? 遠慮なんて言葉、君の中にはないだろうっっっ。

 (バッと、激しい衣擦れの音。フッ……と、何かが空を切る音。バンと、空を切った何かが壁に当たり、そして跳ね返り。ガシャ……と云う、耳障りな音。──その直後より、映像はブラックアウト)


 やだっ……。嫌だって云ってるだろうっ……。
 そんな苦情、俺が聴くとでも思ってるのか? 遠慮なんて言葉は知らない、強引な恥知らずなんだろう? お前の恋人は。
 だ……だけどっ……。
 だけど? ──お前、俺と抱き合うのがそんなに嫌か?
 そうじゃなくってっ…。別に……そ、その……こういうコト、は……夜だって……。──大体っ! 今日は出掛けるって約束だったのだしっ。毎日君と一緒にいられる訳じゃないから、共にいられる時くらい、話をするとか、何処かに連れ立ってみるとか……。そう思うだけ、で……。
 成程な。確かにそれは、俺も思うが。──云ったろう? こんな日のショッピングモールは、酷く混むって。お前にだって判ってる筈だぞ。そんな所にお前と出掛けてみろ。国民に人気の高い、庶民的な国王陛下の周りにゃ、瞬く間に人垣が出来るのがオチだ。ロクに買い物も出来ず、退散させられるのも目に見える。だったら俺は、最初っから、お前とじゃれ合ってる方を選ぶな。
 でも……だからって、何も…………──。
 いいだろう? 久し振りに逢えて、嬉しそうな顔してくれるお前見てたら、その気になっちまったんだから。
 ………………だから君は、色魔だって云うんだっ。


 (それまでとは若干『質』の違う、さらさらとした衣擦れの音。キュっと、ソファの軋む音。そして、ふわりとした『何か』)


 ん……やだってば……。
 又、それか?
 くすぐったいんだってば……。
 もう少し、色気のある台詞を、聞かせて貰いたいもんだが……。
 そんなこと云われた…って……。んっ…。
 ──素直じゃねえな、相変わらず。
 うるさ……いっ……。──セッツァ……せめて……寝室……──。
 どうして?
 ……明るいのは……っ……。
 たまにはいいだろ? お前の躰が良く見える。──ほら…。
 ……っ。……嫌…だっ……。こんな……っ。
 恥ずかしがる必要が、何処にある?
 判ってるくせ……にっ……。んっ…………あ……。
 判ってる? ……さあ……どうだかな…………。
 あ……あ…。あ、う……んっ……セッツァ……セッツァーっ……。
 ……ん…?
 …愛し…てる……って……聞かせ……────。


 (ソファの上にて、人が蠢く音。何かが『湿る』音。若干大きくなった、家具の軋み音。それらが徐々に、大きさを増して行く中)
 (────再生終了)

 

END

 

 

後書きに代えて

 

 激しく、バカップル…………(眩暈)。
 そっか……こんなのが、あの国の公文書資料館には、深く深く、眠ってるんですね……。フィガロがなくなるまで、保存されるのかなあ、本当に……(笑)。
 ああ、これ聴いちゃった面々の、その瞬間のお顔を、私は拝見してみたいです。
 …………それよりも、大丈夫なんでしょうか、この国。
 大丈夫なんでしょうか、私……(汗)。

 宜しければ、感想など、お待ちしております。

 

 

 

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