カナタとセツナ ルカとシュウの物語
『それも災厄の一つ』
「マクドールさん…………」
「ん? 何? セツナ」
「昨日、大事件が発生したんです。大変だったんです。……泣き言垂れてもいいですかっ!?」
「セツナが、泣き言垂れたいくらいの大事件……? ……言ってみて、何が遭ったの?」
「…………ナナミに、レストランの厨房を乗っ取られたんですっ!!」
「あーーーーー…………」
「僕が、シュウさんに取っ捕まってた隙に! ナナミが強硬手段に打って出て! 何て言ったのかまでは知りませんけど、ハイ・ヨーさんのこと言い包めて! 超巨大寸胴鍋一杯のお味噌汁をーーーーーーーー!!」
「……それは、確かに大事件だね……。で、でも、お味噌汁で済んだなら、未だ良かったんじゃないかな。食材の無駄遣いになっちゃったんだろうことは、その……正直否めないけど、主菜じゃなかったのだし……」
「ふっふっふっふっふっ……。甘いです、マクドールさん! 夕べは、お味噌汁無料奉仕日だったんですっ。ナナミ作だっていうの知らされないまま、たっ……くさんの人が、タダだったお味噌汁頼んで、だから『犠牲者』がーーーーっ!」
「そ、そう…………」
「……まあ、僕も悪いんですけどねー…………」
「え、どうして?」
「………… それがー。この間、図書館に入ったお料理の本に、湯向きしたトマトを丸ごと入れて作る、爽やか系のお味噌汁の作り方が載ってたんです。お味噌汁とトマトって組み合せは、僕、ナナミが作る、強烈な『アレ』しか想像出来なかったんで、ちゃんと食べられる物になるのか、試してみたくなっちゃって、ちょろっと作ったんです。そしたら、確かに本に書いてあった通り、爽やか系な味のお味噌汁になったんですよ。だから、調子に乗って、ビクトールさんとかフリックさんに味見して貰って、中々いい感じの味、って評価も貰えたんですけど……それが、ナナミの耳に入っちゃったみたいで……。トマトのお味噌汁なら、私だって今までに何度も作ったじゃない! って始まっちゃって……」
「成程……。彼女にしてみたら、セツナの作ったそれと、自分の作るそれは、同じ物にしか思えなかった訳だ…………」
「ええ。確実に違う『物体』だと思うんですけどね……。……だってですね。ミンミンちゃんの証言によると」
「…………うん」
「寸胴鍋一杯のお味噌汁作ったのはナナミだって気付いて、勿体ないと思いながらも捨ててみたら、鍋の底から、大量の、溶け残ったお塩が出現し」
「塩……?」
「更には、カッテージチーズとマヨネーズを使用した痕跡があり」
「一寸待って。ナナミちゃんが作ったのって、お味噌汁だよね…………?」
「ええ、お味噌汁ですよ。と言うか、ナナミの主張『では』、お味噌汁です。──で、汁を絞ったらしいレモンが、生ゴミの中にあって」
「………………えっと……」
「何故か、壷一杯に入ってた筈のお砂糖が、三分の一程減っていて。にんにくで炒められた、おネギと茄子の残りもあり」
「……御免、セツナ。昨日、この城が大変なことになってたのも、ナナミちゃんが作ったモノが、恐ろしい物体だったって言うのも充分理解出来たから、もう勘弁して…………」
End
後書きに代えて
2008.02〜03の拍手小説です。
うちのナナミが作るトマト味噌汁は、どうやら、トマトサラダとトマトジャムと、トマトと一緒に炒めたら美味しいだろう物が、まとめてぶち込まれている模様。
……うん、災厄だ(笑)。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。