カナタとセツナ ルカとシュウの物語

『「実際にゲームに登場するアイテムを使って小話を書いてみよう」なMyお題に基づくプチ話 坊主編』

夕べから、同盟軍の『小さな』盟主のセツナが、何やら一人ブツブツと洩らしていたのは知っていたから、その日の朝食を終えるや否や、戻った自室にてワタワタと勤しみ出したのを、トランの英雄と名高い彼、カナタ・マクドールは驚きもしなかった。

どうせ又、某かを思い付いたか企んだかしたのだろう、と。

「マクドールさん! グレッグミンスター連れてって下さい!」

故に、前触れもなし、唐突に、己が故郷、現・トラン共和国の首都、グレッグミンスターへ、とセツナに乞われても、カナタは驚きはしなかったけれど。

「それは構わないけれど。セツナ? 何しにグレッグミンスターに行きたいの?」

「イワノフさんって人に会いたいからです!」

一体何をしに黄金の都へ? との問いに、シュビッ! と挙手する風に腕を上げつつのセツナの答えには、流石に、彼も首を捻った。

「……イワノフ? どうして? ……と言うか。セツナ、イワノフは今、トランにはいないよ? 解放戦争が終わった後、何処かに旅立ってしまった」

「あ、そうなんですかあ…………。……んー……、なら、マクドールさん、グリンヒル行きましょう、グリンヒル!」

「グリンヒルねえ……。付き合うのは、吝かじゃないけど……」

何故、トラン解放戦争時、己の一〇八星の一人だった画家のイワノフにセツナが会いたがるのか、その理由への疑問を一旦脇に退け、トランへ行っても、彼に会うことは叶わないとカナタが教えれば、セツナは酷く残念そうに呟き、が、あっという間に元気を取り戻して、今度は、学園都市グリンヒルへ、と乞い出した。

「セツナ。どうして? 何か、したいことでもあるの?」

「はい。──僕、この間、やっと、設計図を揃えたんです」

「設計図? ……ああ、以前から、ジュドが、集めて欲しいって君に頼んでた奴? 同盟軍のシンボル的な彫像を彫りたいからどうの、の」

「ええ、それです。で、集めた設計図の中から、これなら! って思えたのを選んでジュドさんに持ってったんですけど、亀の頭に竜の胴体に白馬の手に兎の足っていうのは、一寸考え直した方がいいと思うって、やんわり断られちゃったんです。でも、僕は可愛いと思うんです。可愛いと思いませんか? マクドールさんっ!」

「亀の頭に竜の胴に白馬の手に兎の足……? ……か、可愛いかも知れないけど、統一性はないんじゃないかな……」

「そうですか? 僕は、トーイツセーとかいうのよりも、可愛い方が重要だと思うんですけど。……で、ですね」

「……うん」

「僕が造って貰いたいと思ってる彫像が、どれだけ可愛いか、誰かに絵に描いて貰えば、きっとジュドさんも判ってくれると思ったんです。それで、画家なイワノフさんに描いて貰おうかな、って」

「………………でも、イワノフは今いないから、グリンヒル辺りで、絵の描ける誰かに、ってこと……?」

「はい! そーゆーことです、マクドールさん!」

そうしてセツナは、何処までもカナタの問いに答える形で、何故イワノフに会いたがったのか、何故、今はいない彼に会うのを諦める代わりにグリンヒルへ行きたいのか、それを、酷く熱込めて語り。

「……セツナ。思い直さない……?」

漸く、全てを把握したカナタは、あからさまにセツナから視線を外し、天井を見上げた。

「ヤです!」

「ヤです、じゃなくて……」

「僕は、誰に何て言われても、僕が可愛いって思う彫像を造りたいです! ──という訳で、マクドールさん、グリンヒルです!」

けれどセツナは、頑として己の欲求を叶える為の第一歩を踏み出すのだと主張して譲らず。

「…………ホントに、もー………………」

こうなったセツナに、僕が勝てる筈もなかった、と、カナタは渋々、グリンヒル行きに同行して。

数日後。

同盟軍本拠地に、ニューリーフ学園にて画家志望の若者に無理を言って描いて貰った『彫像完成予想図』を見せびらかしつつ一席ぶったセツナを怒鳴り飛ばす、同盟軍正軍師殿の罵声が響き渡った。

End

後書きに代えて

2010.01〜2011.07の拍手小説でした。

……すみません…………

──タイトル通りのお話です(笑)。

セツナは多分、統一性という言葉を知らないと思います。そういう類いのことを知っていたら、あの性格にはならないかと(笑)。

そういう彫像はどうだろう、と思いつつ、セツナを強く咎められないカナタも、大概駄目ですが(笑)。

──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。