きっと、俺の終焉の地は、誰にも判らないだろう。
俺にだって判らないから。
この世界の何処かの空の下で、旅をしたまま、俺は終わりを迎えるんだと思う。
……家族は、うん、まあ……、いることはいる。
君と言う存在が、この世界に在るのだから、その辺りは多くを語らずとも察せられるだろう?
君自身が答えみたいなものだしな?
──因みに、俺の色恋に関する話は秘密。誰にも教えてあげない。
………………最後に。
君は、君へ宛てて綴った手紙のような、回顧録のようなこれを読んで、一寸した違和感のようなものを覚えたかも知れない。
俺自身が伝説や正史からは消し去った、ハラヌ、と言う俺の名字を明かしたから。
君自身は継いでくれているかもだけど、敢えて、伝説の中からは、俺の名字は消した。
アレク、と言う名だけを残した。
────ハラヌ、と言うのは、アリアハンの古い言葉で、旅を意味する。
旅とか、路とか、そんな風な意味がある。
それが、俺の家の名字。
……だから隠した。
どんな些細なことでも、柵
名字からして旅、だなんて、柵だろう?
正直に打ち明けると、俺自身は、旅に魅せられたけどね。
他人には、そんな、なんて言われ兼ねない人生であり日々だったけど、俺は、俺自身の人生に、日々に、何よりも旅に魅せられた。
けど、子孫達も、そうとは限らないからさ。
柵の一つを消したんだ。
でも……、やっぱり君には、俺達一族の本当の名字も、その意味も、伝えておきたくなっちゃって……。
────それじゃあ、筆を置いて行くとするよ。
そう遠くない先で迎えるだろう結果に、満足出来るかどうかは判らないけど、後悔はしてない。
悔やみは、一つだって……──。
……あ、御免、嘘だ。
今でも一つだけ、悔やんでいることがある。
──さよならも言えずに生き別れてしまった、母さんや爺ちゃん達との再会を叶える路を捨てたこととかは、悔やんでいないし心残りでも無い。
全ては、もう過去の出来事。
生きてきた時間にも、人生にも悔いは無い。
でも。
もう一度逢おうと。きっと又逢えるからと。ラーミアと交わした約束を破ってしまったのは、今でも悔やんでる。
……ラーミアは、判っていたのかも知れない。ギアガの大穴を潜ったが最後、俺達は、上の世界に戻れなくなると。
だから、引き止めたのかも知れない。
なのに俺は、約束なんか交わして、ラーミアを置いて…………。
────もう一度逢いたい。
一目でいい、ラーミアに逢いたい。
約束を破って御免、と謝りたい。
俺達を背に乗せて、大空を翔けてくれたラーミアが、俺は大好きだった。
本当に大切な友達の一人であり、俺の子共みたいな存在だった。
……ラーミアには、想いを残してしまった。
きっと、ラーミアも、俺に想いを残してしまった。
伝説の不死鳥ラーミアの意匠──ロトの紋章を、俺達一族の絶対の紋章ともしたのは、それを世界に知らしめたのは、決して、ラーミアのことを忘れないとの、俺の誓い代わり…………──って、あ。
柵を取り去りたかった、なんて書いたばかりなのに、俺自身が、柵拵えちゃってたや……。
…………はは。御免、この歳になって気付いた。しかも、たった今。
何事も、難しいもんだね。儘ならない。
うん、でも、これだけは誓える。
絶対の自信があるんだ。
────足掻き続けることも、抱えた望みも願いも、何があろうと諦めない。
俺は、勇者だから。
……さよなら。
アレク・ハラヌ
End
後書きに代えて
『ROTO(当サイトのDQ@ロトシリーズの二次小説本編)』の中に登場した、「勇者ロト@DQ3主人公:名前はアレクさん」の回顧録(のようなもの)と当人の話でした。
──蓋を開けてしまえば、結構いい性格してるんですけどね、うちのロトの末裔三人組のご先祖は。
あくまでも、私の個人的なイメージの上では、極普通の少年@但し勇者になっちゃったけど、な感じかな。
…………少し、思い込みは激しいかも知れない(笑)。
尚、この作品は、『ROTO』をお読み下さった方に拝読して頂くことを前提としているので、以下は、そのつもりで書かせて頂きます。
──アレクの『敗因』は、諦めを捨て過ぎたこと。
そして、想い過ぎた(誰を、かは兎も角)こと。
恐らくは、その辺り。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。