final fantasy VI
『病の幸福』
Edgar version
前書きに代えて
本日、2002年08月16日。
エドガーさん(とマッシュ君)のお誕生日なんですが。
今年の管理人の気分は、エドガーの誕生日くらい、自己生産はしたくない、と云う気分なので(笑)。今年は、エドガーさんお誕生日だねおめっとさん企画、ありませんが。
何にもないって云うのも、寂しいかしら、と思い、以前に書いて、upするのを、すっっっっっっっっっっっっっ…かり忘れていた小説、upしてみます。
では、どうぞ。
余り、柔軟さを感じられない、男性特有の固さを感じる膝の上に、頭(こうべ)を預け。
エドガーは、瞑れそうで瞑れない、重たい目蓋を処しあぐねて、気だるそうに、首の向きを変えた。
恋人の、腰の辺りに押し付けていた彼の頬は離れ。
逆の頬が、腿に触れたから。
セッツァーは、身じろぐエドガーの額に乗せていた手で、前髪を掻き上げてやった。
ひんやりと冷たく感じるだろう指先で、彼がそうしてやれば、エドガーの重たい目蓋は、一度は閉じたが。
又、うっすらと持ち上げられて、潤んだ紺碧の瞳が、見上げて来るのに気付き。
己が膝の上から、滑り落ちそうになったエドガーの体を、片手で押し上げ、支えた。
左手で、体を支えながら、右手では、何度も、長い金の髪を掻き上げてやっても。
熱を帯び始めた所為で、汗が浮き出した恋人の額に、頬に、ほつれ毛は絡み付く。
──体調を崩し始めたエドガーが、こんな風に、半身だけを掛け布の中に潜らせて、半身を露にしているのは、今直ぐに止めさせ。
ベッドに腰を下ろし、背に凭れた自分に寄り掛からせるでなく、きちんとベッドに横たえさせてやった方がいい事は、セッツァーにも、よく判ってはいた。
それは、エドガー自身にも、重々承知の事だろう。
だが、彼は、云う事をきかなくなった身を、恋人の膝の上に預けて、退こうとはしなかったから。
後で、どうなっても知らないぞ、なんて、つれない忠告だけをして、セッツァーは、膝を、恋人の枕として、明け渡した。
それからもう、半刻近く。
内に隠って逃げては行かない熱を持て余して、眠る事も出来ず、エドガーは唯、恋人の膝の上で、だるそうにしながら、唯、縋っている。
だから、何とかしてやりたいと、セッツァーも思うけれど。
こればかりは、如何ともし難く。
恋人よりは低い体温を持つ掌を、そっと、額の上に乗せてやるしか、なかった。
膝の上で、何度も何度も、エドガーが寝返りを打つ。
寒い、と言い出した頃よりも、顔の火照りは、強くなったよう。
息遣いさえ、少し荒くなって。
セッツァーは、不安そうに眉を顰めた。
が、そんな恋人の顔色に気付いたエドガーは。
熱の縁に沈みつつも、微笑み、首を振る。
こうしているのが、いいのだと。
例え体は辛くとも、こうしていれば心が幸せなのだと、エドガーは、そんな風に、微笑んだ。
──故に。
心底、彼の体が心配でも。
力尽くで恋人を、掛け布の中に押し込める訳にもいかなくなって、セッツァーは暫し、戸惑ったが。
風邪なんて、誰かに移してしまえば治る、と、よく云われる、信じれば本当になり、信じなければ嘘になる、そんな言い伝えを思い出し。
子供じみてやがると苦笑しつつ。
そっと、エドガーに接吻けてみた。
突然のそれに、エドガーは、一瞬、目を見開いたが。
熱に浮かされた瞳を閉ざし。
胸の底から、幸せそうに、笑った。
そしてそのまま。
トントンと、幼子を寝付かせるみたいに、背(せな)を叩き、撫で出した、恋人の優しい腕に誘われて。
漸く彼は、眠りへと、つく。
…………きっと、明日の朝には、辛い熱など何処へと消えて。
恋人に見守られる中、目覚める事が叶うだろう、と。
END
後書きに代えて
……たまーに書きますと、可愛いですな、病気ネタ。
今思い出しましたが、私これ、upするの忘れていた、のではなく、upする気がなかった模様です。
理由は単に、余りにも短過ぎるから、なんですけどもね。
……………本当に、短いな……。病の幸福、Setzer version、も上げてみましょうか(急遽、決定)。
宜しければ、感想など、お待ちしております。
と云う訳で、病の幸福 Setzer version、はこちら。