────神の力を手に入れた
 

 声高にそう叫んで、この世の終わりを願った男は、確かに神の如きだった。
 この男は本当に、神になったのかも知れない、そんな想いが脳裏を過る程。
 『神となった男』は、この世界の何よりも強大な力を持ち、そしてそれを思う存分、見せつけて止まなかった。
 瓦礫の塔に乗り込んで、『神となった男』の元へと辿り着くこと叶った仲間達は。
 誰もが傷付き血を流して、今にも、地に伏せんとしていた。
 死者が渡ると言う。
 忘却の川、レテが、冒険の旅の終着点に辿り着いた彼等の眼前に、姿現すのも、そう遠くはなさそうだった。
「………………ま、それでも…………」
 何もない、虚空に漂い、人々を見下ろす『神となった男』を見上げながら。
 己おのが命の灯火の大きさも考えず、倒れそうになっても、剣を、槍を構え続ける仲間達と共に、やはり、右手に掴んだ剣を構え直して、セッツァーが大きく、肩で息を吸った。
「それでも……? 何だ、と?」
 額やら、腕やら、足やら。
 無事な場所を探した方が早い程の手傷を受け、血に塗れて剣を構えたセッツァーの横で、セッツァーと同様に傷付いたエドガーも又、詠唱を唱えるべく、右手を胸元へと持ち上げた。
「……勝ち目のない勝負に賭けた覚えは、俺にはないからな……」
 こめかみから頬へと伝う血を、ぺろりと舐め取って、セッツァーは笑う。
「嫌な話を、思い出させてくれる…………」
 問い質した結果、『それでも』の後に続いた言葉に、エドガーは呆れ、嫌そうに顔を顰めた。
「事実だろ?」
「……まあね」
「なら、不服はねえな?」
「…………今はね」
 ──そうして彼等は、愉しそうにも見える、逆に嫌そうにも見える、酷く複雑な表情を湛え。
 『神となった男』へ、鋭く光るその切っ先を、魔法の光灯る指先を、確かに向けながらも。
 刹那、ふい、と眼差しを絡み合わせ。
 どちらからともなく、一度ひとたび『神となった男』へ向けた『凶器』を手放し。
 今、どうしても、それをしなければならないのだという風に。
 狂おしいまでに、互いが互いを掻き抱いだいて。
 流れ続ける血の中にあるモノ、それさえも混ざれ、と。
 彼等は、そんな接吻くちづけを交わした。


「これが終わっても。続けるか? 恋人の真似事」
「そういう冗談は、私は嫌いだ」
「なら、これが終わったら、お前はどうする?」
「…………続けるよ。『意趣返し』なのだから」
「……同じことじゃねえか」
「まあね」
「で? 何時まで続ける? その『意趣返し』とやらを」
「………………君と私が、共に死ぬまで」

 

 

End

 

 

後書きに代えて

 

 (以下、同人誌『戀人』の後書きより抜粋です)

 如何でしたでしょうか、『戀人』。
 多分、ネットの方で私が普段書いているノリの物と比べますと、かなり異色なんじゃないかなと、自分でも思いますが、お楽しみ頂けましたら幸いです。
 ネットではなく、同人誌用に書いた物ですから、まあ、たまにはこんなノリも(笑)。
 これは、何時のことでしたかねー……。今年(※2003年)の年頭のことだったと思うんですが……友人と飲んでおりました時に(ええ、私はこのパターン、とても多いです/笑)、確か、セッツァー以外の誰だったら、エドガーとデキている処を想像出来るか、というような話になって、レオ将軍というパターンはどうだろう、という流れになって…………(うろ覚え)。
 で、散々盛り上がった果てに、ならそれ、夏に受かったら書いてみましょうか、と相成り。
 その結果、出来た本がこの本です。
 煩悩万歳(笑)。
 実の処を言ってしまえば、まあ、楽屋落ち、という奴ですが、元々私の頭の中だけに有った時は、もーちょーーーーっと、違うお話だったんですけれど(と言っても、大筋は全然変わってませんが(笑))。
 どうにも私は、自分で書くならば、エドガーさんがセッツァーさんと何かをしているシーンを沢山拵えたいらしいタイプのようで、書く予定だったのに、削られちゃったシーンとか有ったりはするのです。

 ……プラトニックだったなあ……エドガーとレオ。
 もう少し、両想いだったのねっぽいノリだったんだけどなー、初手は。
 叶うならエロも書け、自分、くらいの勢い、あったんだけどなー……(笑)。
 …………まあ、人生色々(笑)。

 ────という訳で。
 2003年の頃には、こんなこと、ほざいてました(笑)。
 六年も前に書いたものを、再度upし直すって、ちょっぴり苦行でした(笑)。
 ──宜しければ、ご感想など、お待ちしております。

 

 

 

 

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