九龍妖魔學園紀

『気は心』

「今の世の中って、便利だよなー。そう思わない? 甲ちゃん。長期休暇の時以外は、学内から出られない天香ここからでも、大抵の物、ネットで買えるんだもんなー。有り難や。早速届いたしー」

「……だから、何でも彼んでも拝むんじゃない。お前は何処の年寄りだ。──で? 九ちゃん、今度は何を買ったんだ? 又、『JADE SHOP』で武器でも調達したのか?」

「いんにゃ。今回は、そーでないのだよ」

「じゃあ、何だよ。下らない物に手を出したんじゃないだろうな。クエストに勤しまないと、直ぐに金欠になるくせに、お前は……」

「……何で、そう、子供が正月のお年玉を無駄遣いすんの嗜めるオカンみたいなこと言うんだよ、甲ちゃ──。……御免なさい、反省してます。だから蹴るな! 痛いから!」

「蹴り飛ばしたくなるようなことを言う、お前が悪い」

「ホントーーに、甲ちゃんは愛が無い……。……くっ。挫けるもんか! 俺は負けない!」

「馬鹿言ってないで、何を買ったんだか聞いて欲しいなら、とっとと話せ」

「あ、そうだった。──いやさー、この間、ネットショップで見付けた物なんだけどさ。甲ちゃん、好きなんじゃないかと思って買ってみたんだ。一緒に、味見しような!」

「味見? 食いもんか? どっかの店のレトルトカレーとか?」

「ちゃう。カレー関係はカレー関係なんだけど。……えーーと。これこれ! 見て見てーーー!」

「……………………………………」

「……あれ? 無反応? 甲ちゃんの最愛の食物、カレー系だぞ?」

「お前な……。カレー味の食いもんなら、何でも俺が許すと思うなよ……?」

「えーーーーー。何が気に入らないんだよ、パッケージにも書いてあるじゃん、『すてきな味』って! 素敵な味の、『インドカレーようかん』だぞ? 食べてみたいと思わない?」

「思わない。絶対思わないっ! 誰が思うかっ! つーか、何処の馬鹿だ、インドカレー味の羊羹なんか作りやがったのはっ!」

「ちゃんとした商品なのにー。……じゃあ、これは? 某港町のカレーな博物館特製、『カレーチョコレート』」

「…………たまには、運動するのも悪くないと思わないか。『サンドバッグ』を目一杯蹴り上げたら、さぞかし、いいストレス発散にもなるだろうしな。……どう思う? 『サンドバッグ』」

「俺は、サンドバッグでも、サンドバッグっつー名前でもないから。──っつとにもー、我が儘だなー。……じゃあ、これは? 『いかチョコカレー』! カレー風味のチョコレートでコーティングされたさきイカ! 新しい美味しさって書いてあるし!」

「……………………葉佩九龍」

「……はい、何でしょうか、皆守甲太郎さん?」

「今から、遺跡に行かないか?」

「おや、珍しいことを。……あ、判った! 遺跡探索して腹空かせて、羊羹とチョコレートとさきイカを、美味しく頂こうという発想?」

「そうじゃない。……人を、存分に蹴り壊すには、邪魔の入らない広い場所がいいだろう? 寮の部屋じゃ狭いからな。──という訳で。行くぞ」

「…………甲ちゃん。俺が、甲ちゃんに注いだ愛の、何が気に入らなかったと……?」

「お前のは、愛じゃなくて嫌がらせとしか思えない。その身を以て、カレーと俺に償え。そして、海よりも深く反省しろ、馬鹿九龍っ!」

「……………………敗因は何だろう……」

End

後書きに代えて

2008.02〜03の拍手小説でした。

実在しますシリーズ(笑)。……試してみたい、インドカレーようかん(笑)。さきイカは、一寸なー(笑)。

──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。