東京魔人學園剣風帖
『挑戦者達』
「京一、京一。一寸教えて欲しいんだけど」
「あ? 何だよ、ひーちゃん。教えて欲しいって、何を?」
「葛飾区って、どうやって行けばいい?」
「葛飾区……? 葛飾区の何処だ?」
「ええとね。…………ここ。この駅」
「……ああ、京成線か。つーことはー、えーーーと……。一番簡単なのは、山手線で日暮里まで行って、そっから乗り換え、だな」
「ふーーーん。そっか。……付き合ってくれるよね?」
「は? そりゃ、ひーちゃんが付き合って欲しいってなら、付き合うけどよ。どうせ、俺は暇だし。でも……んなトコ行って、何すんだ? …………あ、あれか? 拳武館に用があるとか? あそこって、確か葛飾区だよな。……もしかして……壬生の奴に、何か遭ったのか……?」
「そうじゃないよ。それにここ、拳武館高校の最寄り駅じゃないじゃん」
「あ、そうか。じゃあ、何だよ。異形でも出たのか? さもなきゃ、アン子の奴に誑かされて、何か調べて来て欲しい、って頼まれちまった、とか?」
「違うって。そっち関係だったら、付き合ってくれる? なんて訊かないよ。……行ってみたい店があるんだ」
「ふーーーん。珍しいな、ひーちゃんがそんなこと言い出すなんて。要するにあれか、買い物に付き合えって奴か」
「買い物……でもないんだけど……。…………その、実はさ。行ってみたい店って、ラーメン屋なんだ」
「ラーメン屋……?」
「うん。……京一、ラーメン好きだからさ、一寸珍しいラーメン食べに行ってみるのもいいかなー、なんて思って……」
「え、ひょっとして、俺のこと思って……?」
「…………ホントに、一寸したことなんだけど。そういう、食べ歩きー、みたいなのも、悪くないかなー、とか思ったって言うか」
「ひーちゃん……。サンキューな!」
「ううん。俺、未だに東京の地理がよく判んないから、どっか行こうってなると、何時も京一に頼っちゃうだろう? だから、たまには俺が発案っていうのも、やってみたくて」
「んなん、気にすることねえのに。……でも、そっか。…………へへへー。じゃあ、早速行こうぜ、ひーちゃん!」
「あ、そうだね。あんまり遅くなるのも」
「片道、一時間は掛かるからな。──楽しみだぜ」
「俺もー。初めて聞いたラーメンでさ」
「そんなに珍しいのか? 何味なんだ?」
「コーヒー」
「…………………………は? コーヒー……味……?」
「うん。コーヒーラーメンって言うんだってさ。滅多にないよね、そんなの。どんなんなんだろーなー。楽しみだなー」
「ひーちゃん……。龍麻…………。それは、珍しいラーメンっつーのとは、ちぃっと違うんじゃねえ……?」
「え、そう? そんなことないと思うけど。──ブラックコーヒーな味のと、カフェオレな味のとあるんだって。両方頼んで、半分こしてみようよ、京一」
「……お前、チャレンジャーだったんだな………………。で、でも……折角ひーちゃんが、俺のこと思って言い出してくれたんだから、ここはいっちょ、腹括っ……。…………括りたくねえ……」
End
後書きに代えて
2008.02〜03の拍手小説でした。
実在します、コーヒーラーメン。チャレンジしたことはありませんが(笑)。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。