カナタとセツナ ルカとシュウの物語
『命の運ばれる先で』
辺り一面、景色は冬枯れだった。
緑など何処にも見えない。
全てが、煤けた薄い茶色。
空と雲は鈍色だった。
恐らく、もう間もなくすれば、雪雲になる筈だ。
鈍色の空の向こうに連なる、稜線を全て覆い尽くす雪雲に。
何処か暗く、何処か明るく、何も彼もを芯まで凍らせる冷たく白い塊を落とす、厚く広がる雲に。
そうして、この冬枯れの景色は、全て、純白に塗り替わるのだろう。
純白の野となるのだろう。
…………ああ、せめて。
せめて、今日という日が、晴れやかであれば良かった。
抜けるような青空、生命の謳歌を促す太陽、そして、一面の緑。
そんなものに、世界が彩られていれば良かった。
────死ぬには良い日だ、と。
そう、嘯く為に。