禁断の恋愛10題 +Ver.A+
1. 束の間の逢瀬は切ないばかりで
それじゃあ、又、とだけ言い残して君と別れてから、数日しか経っていないと言うのに、今日も、君が、玄関の扉を叩く音が聞こえて来るから、僕にはもう、溜息を付くしか出来ない。
……嫌な訳ではないよ。
「一緒に戦って下さい」
そう言って、僕の許を訪れる君も、共に戦って欲しいとの、君の願いも。
君の訪れを待つのを、僕は厭うていないし、君の願いも、厭うてはいないよ。
こんな僕でも、君が必要としてくれるなら、それでいいと思うよ。
けれど、君の訪れを知って、僕の唇から零れ落ちるのは、溜息ばかりだ。
──何故だろう。
君は僕に、『単なる力』のみを求めている筈なのに。
その為に、僕を求めているのだろうに。
君にとって僕は、君の為の戦いを勝ち抜く、協力者の一人でしか有り得ないだろうに。
君の訪れを知ると、あたかも、逢瀬の始まりの時のように、胸が痛くなる。
君が僕に求めているのは、逢瀬という言葉が似つかわしい、甘やかな刻でも関係でもなく。
もっと殺伐とした、『冷たい刻』であり、冷たい関係の筈なのに。
それでも、玄関の扉を君が叩くその音は、まるで逢瀬の始まりを告げているかのように聞こえて、「こんにちは」との君の声は、僕の胸を確かに掴む。
……だから、本当は、君の訪れを知った時僕は、この唇から溜息ではなくて、歓喜の何かを零したいのに、君が僕へと求めるソレを、知り過ぎてしまっている僕には、溜息しか零せず。
もしもダレカが赦してくれると言うなら、望み得る限り君の傍にいて、君の願いを叶えたいとも思うけれど、そんな物を望みはしないだろう君の傍にいるのは苦し過ぎて、尻尾を巻いて逃げ去るように、最低限のことだけを終えて、君の許より、僕は。
…………だと言うのに。
君と共に過ごす束の間の刻は、その関係を秘めた者達の交わす、束の間の逢瀬よりも切ないと、僕には感じられて。
溜息、を零す以外。
僕は一体、どうしたら良いのだろう。
……判らない。
End
後書きに代えて
名無し坊ちゃん。
片恋に悩んでおられる模様。
つか君、何時2主に惚れたの(笑)。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。