禁断の恋愛10題 +Ver.A+
2. 今度は何時逢えますか
溜息のみで、君の訪れをやり過ごし、曖昧な色を浮かべた頬と、やはり曖昧な言葉で、君との刻を堪え。
それじゃあ又、と別れを告げれば、君は何時も。
「今度は何時逢えますか?」
…………僕を見上げ、そう尋ねて来る。
そんな君に、冷たい態度で、「さあ……」とか何とか、素っ気なく返せてしまえば良いのだろうけれど。
それも、僕には出来なくて。
「君が、僕を連れ出したい時に来てくれればそれでいいよ」
……なんて調子の科白を、僕の口は紡いでしまう。
君の訪れが、嫌な筈などないから、嫌などと、君に嘘は吐けず。
君の顔を見るのも、君の声を聴くのも、本当は苦しくて仕方がないのに、そんなことないと、自分に嘘を吐くしかなく。
…………例えば今、僕が、何もない、細い道の直中に立っているとして、立ち尽くすその細い場所を、只一歩、右に逸れるか左に逸れるか、それだけのことをすれば、少なくとも何かは変わるのに、変わってしまったその後、僕に齎されるかも知れないこと、君に齎されるかも知れないこと、それを想像するだけで、立ち尽くす場所から、右へ逸れることも左へ逸れることも。
進むことも、戻ることすら。
僕には出来ないでいるから。
……君には嘘を吐けず。
己には、本当を語れず。
いっそ何処かに、転がり落ちてしまえれば、そう思う瞬間とて、あるけれど。
「今度は何時逢えますか」
──君の声で放たれる、その一言が。
僕の全てを凍らせる。
End
後書きに代えて
暗い……。しかも今日のは短い。うーむ。
──基本的に私の中の坊ちゃんは、強烈逞しい人ですが(笑)、強烈逞しい性格の坊ちゃんで書いてしまうと、禁断の恋愛にならないので、このシリーズは切ない系坊ちゃんで。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。