禁断の恋愛10題 +Ver.A+
10. それは確かに『恋』でした
演じて、自分を騙して、嘘を吐いて、その日までをやり過ごして来たのに、あの人が、「愛しているよ」と囁き出して、幾度も幾度も囁き続けて、そうやって、時間が流れ始めたから、あの人の、最初の囁きから暫く時間が経った頃に、結局僕は、あの人の物になった。
あの人の『愛しているよ』は、『御免ね』に等しいのに、僕は、結局。
……あの人の愛は、死神の愛だ。
何時か、僕──ううん、例え僕じゃない誰かだったとしても、何時か、ソレを殺す愛だ。
……僕の愛は、受け止めるだけの愛だ。
例え、何時かその果てに、殺されることになっても滅びることになっても、受け止めるだけの愛。
だからもう。
あの人と僕が、こうなってしまった以上、ずっと思っていた通り、どうしたって僕達は『幸せ』にはなれなくて、幸せになれないことが、僕達の幸せになる。
──幸せになれないなら、それもいいかな。
…………そんな気持ちが、本当になる。
僕は未だ、子供だ。
僕がどんなに背伸びをしてみても、他の人の目に僕は、子供としか映らないと思う。
実際、子供だし。
だから、こんなことを言ったら、笑われてしまうのかも知れないけれど。
例え拠り所が、只の拠り所でしかなくて、依存、なのだとしても。
あの人に対する僕の想いは、確かに、恋だったのだと思う。
今になって、やっと自覚出来た想いなのかも知れないけれど、確かに僕はあの人に、恋をしているのだと思う。
そして僕は、あの人を、愛しているのだと思う。
このまま、あの人を愛し続けて、あの人に愛され続けて、そうしてその果て、『殺される』ことになっても。
それでもいい、そう思える程に。
……幸せに、なりたい。
そうは思うよ。
誰の目にも幸せと映る幸せ、それを得られたら、幸せなんだろうなあって、僕だって思うよ。
叶うなら、幸せの中で生きて、幸せの中で死にたいと思うよ。
あの人と一緒に時間を過ごして、ゆっくりと歩いて、そうしてあの人と二人、手に取れる形で幸せになれるなら、って、そう望みたいよ、僕だって。
でも、僕達は、そんな風には幸せになれない、そう言うなら。
僕達は、それが行く末だと決まっているなら。
求められる中で、幸せを見付けるしかなくって、求められる中で、僕達に得られる幸せは、幸せでないことが幸せ、でしかなくって。
何を犠牲にしてでも、そう在るしかなくって。
あの人の『掌』の中で、何時か、僕は。
……馬鹿なことを、と。
『貴方』はそう言うかな。
でも、これは確かに、『恋』だから。
僕は、もうそれでいい。
もう、そうやって、決めたんだ。
僕はそれでも、あの人が好き。
End
後書きに代えて
禁断の恋愛10題、完了〜〜〜〜。
……一寸処か、結構暗かった。
反省ポチ。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。