禁断の恋愛10題 +Ver.A+

9. 変わってしまうのが、怖くて

…………嫌だなあ。

凄く嫌だ。

どうしようもなく、嫌。

……何が嫌、って。自分が嫌。

自分で自分のことを、どうしようもなくなるくらい嫌だって思うのって、一寸変な感じがするって言うか、何がどう転んだって僕は僕で、僕は僕自身と死ぬまで付き合ってかなきゃならないんだから、自分で自分のこと、嫌いだとか嫌だとか、あんまり思いたくないんだけど。

でも、嫌だ。

凄く嫌だ。

僕は、今の僕自身も嫌で、変わろうとしている僕自身も、凄く嫌だ。

……大嫌い。

あの人と巡り逢って、ああ、この人は、僕の『幸せ』の源になってくれるんじゃないか、そう思って、拠り所をあの人に求めるようになって、ちょっぴりだけ時間が流れた後。

あー、僕は多分、あの人のことが好きなんだろうなあ、って、何となくだけど、気付いた。

それに気付いたら、あ、だったら僕は、あの人には『相応しくない』し、あの人は僕には『相応しくない』って。

そう思うようにもなった。

僕もあの人も、『幸せ』にはなれないから。

……でも、だったらそれはそれで、いいかな、って。

『幸せ』になれないならなれないで、いいかな、って。

そんな風にも思い始めて、だけどやっぱり、沢山の人がそう思うみたいに、僕だって幸せにはなりたいと思うから、それでもいいやあ、って思ってるくせに、自分で自分に演じて見せたりして、嘘も付いちゃったりもして、うだうだうじうじ、しちゃって。

………………けど……、この数日で。

ああ、もう直ぐ、この戦争も終わりそうだな、そんな雰囲気が漂って来た、この数日。

あの人が、僕に、「愛しているよ」と囁き始めたから。

僕が心の何処かで、言ってくれたらいいのにって、あの人に求めていた科白を、本当に、あの人が、言い始めてくれたから。

「愛しているよ」

…………って。

だからもう、演技も、嘘も効かなくなって来て、僕はそれを、素直に受け入れ始めちゃってて……。

それを受け入れ始めてしまったから、『幸せ』は本当に『幸せ』じゃなくなり始めて、『幸せ』になれなくても、それはそれでいいかなあ、も、現実になり始めて。

…………嫌だな。

嫌だ、凄く嫌。

こうなっても未だ、こんなこと考えてる自分も嫌なら。

『幸せ』じゃない、それが現実になること、それを、平気な顔して受け入れられるように変わってく、自分も嫌だ。

──只で、何かが何かへ変わる、そんなこと、有り得ないから。

何かを得なければ。

そして、何かを捨てなければ。

変わる、なんて、有り得ないから。

僕は一体、何を捨てるんだろう。

それが、怖いよ。

一体何を捨てるのか、それが、判っているのも。

End

後書きに代えて

今日も果てなくドドメ色。

……この2主君、セツナに近いタイプだなー……。

──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。