CATUABA一一カトゥアバと云う植物は。
熱帯雨林に見られる、繁殖力の強い中型の木だ。
随分と古くから、媚薬効果がある薬草として知られており、現地の者達の間では、『こいつを旦那に使えば、六十過ぎても子供が出来るぜっっ!』……てな言い伝えもある程だったりする。
で、カトゥアバ。
これは、滋養強壮に、素晴らしい効力を発揮する、とも云われており。
その素晴らしき効力が、最も発揮されるのは、男性の『性不能症』一一簡単に、ぶっちゃけた表現をしてしまえば、殿方のナニが勃(た)たない病気、これなんだとか。
そして、更に、この薬草に関して云い募るならば、カトゥアバには、悪性の副作用が一切ない。
…………ひじょーーーーーに、優れ物な自然のお薬なのだ、カトゥアバ。
故に。
エドガーから『御相談』とやらを受けた時、侍医は、カトゥアバの木から抽出したエキスで出来た液状お薬を、それはそれは気楽な気持ちで手渡した。
何故ならば、例えばうっかりエドガーが、渡した薬の服用量を飲み間違えちゃいました、てへっ……ってな事態を引き起こしたとしても、精々が処、元気になり過ぎちゃった『ナニ』が、何時まで経っても大人しくなってくれません、程度の『弊害』で終わるし、それくらいのことなら、大事には発展しないから。
この薬ならば、幾ら何でも平気だろう……と、侍医は、あっさり瓶ごと譲ったのだ。
……だって。
毒が薬になるように、薬が毒になるように。
『薬』と名の付くものは本来、物騒な代物である、と云うのが相場で。
本当に効果がある『媚薬』なんて物は所詮、人間様の脳内回線を、ラリラリパッパ、ラリパッパ、にするものでしかない。
早々、『都合の良いお薬』なんて物は、世間様には転がっていないのだ。
そうしてそのことを、侍医は医師であるが故に、良く判っていたし。
sexなんて、気分の問題なんだからー、その気になる程度の物で充分だろ、痛いのは緩和されないだろーけどー、と、本当、くどいようだが、きらーーーーくに、渡したのだ。
一一一一一一一一でも。
……カトゥアバは、植物学上、Erythroxylacea科に分類される。
そして。
Erythroxylacea科の主要植物は、Erythroxylonと云う。
一一これを、某世界の表記で、判り易く説明すると。
Erythroxylacea科と云うのは、コカノキ科、と相成る。
んで、Erythroxylonってのは、コカインの原材料って奴だ。
……ま、要するに。
南国は熱帯雨林な地方の、伝説の媚薬は。
媚薬がー、とか、惚れ薬がー、とか云う、ちょびっとくらいは、可愛らしいかもね、と思える次元ではなくって。
本当の意味で、オツムの中が、ラリパッパでチーパッパ、になってしまうお薬が採れる木々と、間違え易かったりする訳で。
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