11/25/2002 人生は、何事も前向きに。だって、その方が幸せだから。……多分。
 
 何処で何をどう間違ったのか、惚れちゃった相手は男だったけれどっ!
 でも、好きになっちゃったんだし、そんなこと今更どうしようもないし、好きって云ったら相手も好きって云ってくれたし、ちゅーもしちゃったしっ!
 想いは叶ったんだから、しつこいようだけど、ちゅうだってしたんだから、どうせなら、『きちんと』結ばれてみたいしっ!
 目指せ、Let's stepup!
 …………と。
 固く固く、心に誓い……と云うか、心で叫び。
 好き合った相手と『きちんと』結ばれる為。
 某国の、ちょーーーっと大衆的過ぎる酒場で、遊び仲間に教えを請うたセッツァーと。
 自国の、己が侍医を捕まえて、知的好奇心と言い張り、教授を受けたエドガーは。
 両者共に、それぞれの場所にて、それぞれの相手に、
 嘘でしょ? 冗談でしょ? からかってるのよね、お願い、嘘って云ってっ!
 ……なんて、ちょっちナヨナヨしく縋りたくなっちゃうよーな、彼等が晴らしたかった疑問に対する、晴天の霹靂、衝撃の真実、を聞かされ。
 脳天に、クワワン……と金タライの直撃を受けたかの如くの、驚愕を覚え。
 遠く離れていても、二人はとっても仲良しさ、を証明するように、揃って寝込んだ。
 因みに、セッツァーが二日間、エドガーが二日半。
 これが、真実を聞かされた彼等がベッドの中で、うんうんと唸っていた時間である。
 だが。
 片や四十八時間、片や六十時間、に及ぶ、憔悴と葛藤の時を経て。
 悩んでみたって人生なんて始まりゃしないし。
 眩暈を起こしてみたり、知恵熱出してみたって、事実が覆る訳じゃないし。
 うじうじしてるのなんて、はっきり云って、時間の無駄だし。
 惚れた相手と『何とか』なって……と云うよりも、『何とか』して、幸せってー物を掴みたいんなら、前進あるのみ。
 ……と、ああ、貴方達ってやっぱり、仲が良いんですね、打ち合わせた訳でもないのに、同じ結論に辿り着くなんて、と外野的には呆れた風に云いたくなるだろう結論を得て。
 一寸、教えられた『事実』に、真っ向から立ち向かう根性も気合いも、未だ持ち合わせていないけれど、現実をすんなり受け入れたら……、と考えるだけで、さぁぁ……っと血の気は引くけれど、千里の道も一歩からっ! ……って。
 寝込んでいたベッドから起き上がった後、彼等は、弛まぬ前進を、続けようと決めた。
 ……が、しかし。
 彼等が必死こいて固めた、『弛まぬ前進』、とやらは。
 ほんの少しばかり、遠回りと云うか、……馬鹿? と云うか、まあ、有り体に云えば、本人達は真剣だけど、端で見ている周りは、大丈夫? ……と思わず、云いたくなってしまうような前進、だったから……一一。
 

11/26/2002 始めの一歩 セッツァーさんの場合
 
 うんうん唸り続けて、知ってしまった知らざるとも良かったこと、が、知らなかったことへと返るってんなら、永遠唸り続けてやるが。
 ま、現実ってぇものは、そんなに甘くはないから。
 一寸、冷静に考えてみよう。
 ……あの『コト』を、冷静に考える、ってのも、ちょいと眩暈を伴うことではありやがるが……考えないよりはいいんだろうし。
 一一で、だ。
 『話』は判った、疑問も解けた。
 問題は、どうするか、だ。
 代用箇所……ああ、あの馬鹿が使ってたこの言い方、俺は嫌いなんだよな……。
 ……まあ、いい、兎に角。
 兎に角、だ、男同士が結ばれる時、……うげ、な部分を使用して、ってのは、そこしかないってんなら、仕方ないんだろうが……。
 でもなー、排泄器官だぞ、あそこは……。
 愛で乗り切れるものか? その感覚を、愛は乗り切るのか?
 そう云うやり方がお好みの異性間カップルがいるってのも、知らない話じゃねえが……愛と嗜好は別モンだろ、普通。
 ……。
 …………。
 ………………ああ、又眩暈起こしそうだ……。
 ま、まあ……それは、一寸こっちに置いておこう……。
 それよりも、問題なのは。
 愛と嗜好の関係が生み出す艱難辛苦を、何とか乗り越えられたとして一一我ながら、大袈裟だな一一、押し倒す方の立場は、俺は受け入れられるんだろうが……押し倒される方の立場は、ちょいとなあ……鳥肌立ちそうだよなあ……。
 だが、多分。
 同じ男である以上、あいつもこの感覚は一緒だろうから……。
 ここはお互い仲良く、両方体験してみましょう、ってか? ……それも、冗談じゃねえな……。
 一一っとによぅ……どうしろってんだかなー……。
 一番まっとう且つ近道、なのは、エドガーの奴と、この件について双方納得行くまで語り合う、って奴なんだろう。
 ああ、恋愛と体のことに関する妥協はいけない。
 遊びなら兎も角、本気ならば、身勝手ってのは程々にしないと、後でこじれる。
 ……とは思うがー。この件をー、どうやってー、あいつと話し合えとー……。
 ……。
 …………。
 ………………。
 お。いいこと思い付いた。
 

11/27/2002 始めの一歩 エドガーさんの場合
 
 やっぱりね、人生、何事も前向きに考えるのが、健全な在り方だろうと思うから。
 何時までも熱なんか出してないで、少しこう……冷静に、色々、諸々、考えてみようかな。
 だって、この問題に関して進めなくなるってことは、セッツァーと永遠、プラトニック、清い交際を続けるってことだから。
 それも、悪くはないと思うけど。
 一応私だって未だ二十代、そこまで、老成してないし。
 ……でもねえ……。思いきって、かつてないくらい勇気を振り絞って、侍医から聞き出したことは、何処までも、熱が出そう……、な事実なのには変わりがなくって……ああ、どうしよう。
 何とかかんとか、全てを乗り越えて、セッツァーといざっ! ……ってなった時……その行為を受け付けられるか否かは、凄く疑問だ……。
 だってだってだって。
 あそこって………………。
 ……あ、クラクラして来…………一一。
 一一いけない、鬱になってみても仕方ない。
 ああ、それはそうと。
 私は知らなかったこの事実、セッツァーは知っているんだろうか。
 今まで散々遊んでた風だから、もしかしたら『実践』で知ってるのかも知れないけど一一あ、そう考えると一寸腹立たしい一一、案外大穴で、知らないかも知れないし……。
 でもやっぱり、知ってたら?
 男に、その……『そうされる』のは一寸な……って私が思うのと同じように、彼だって、そう思うんだろうな……。
 ああ、だけどぉぉぉっ。幾ら愛してるとは云ってもぉぉぉっ、男に押し倒されて、あまつさえぇぇぇっっ…………。
 かと云って、私が押し倒すって云うのもね……。一寸ね……。
 だってね……あそこだしね………………。
 話し合ってみるって云うのが、一番まともな方法なんだろうけど、あああ、でも、踏ん切りが付かない……。
 …………セッツァー、このことに関して、どう考えてるんだろう……。
 

11/28/2002 恐らく。それを人は、実力行使、と呼ぶ  その1
 
 この、端から見たら、どーしよーもなく愚かな事態の打開の為に。
 ある意味、付けんとも良い知恵を付けたセッツァーさんは。
 永遠に抜け出せない迷宮なんじゃないか、って程ぐるぐるしていた自問自答の最中、ふっと思い付いた『良いこと』を実行すべく。
 その日、麗しの君、愛しい貴方、好き好き大好き、な、エドガーさんのお城を訪れていた。
 一一知ってしまった現実は、とっても心臓に悪かった。
 お脳にも宜しくなかった。
 挙げ句、ちょーーっとばかり、及び腰にもなっちゃった。
 ……でも。
 だからって、麗しの君、愛しい貴方、好き好き大好……一一くどい一一なエドガーさんと、懇(ねんご)ろになるのを諦めたくはないし。
 これから先、順調に事が運べば多分長いだろう生涯、ぬくぬくの部屋でひなたぼっこをするのが唯一の楽しみ、な、じい様になるまでの年月、エドガーさんと、『プラトニック・ラヴ 括弧 頬染め 括弧閉じ』、な恋愛模様を展開していくのは、知ってしまった現実以上に、ぞっとしないので。
 ほんのすこぉしでいいよ、関係を進展させたいよ、と云う、邪(よこしま)な想いと、『思い付いた良いこと』を実行して、エドガーがその気になってくれて、んで以て、今後の主導権なんか握れちゃったりしたらいいなあ……と云う、もっと邪な想いを叶えるべく。
 彼は、精神的には恋人、なエドガーさんと、今現在、向き合っている。


 一一お前の顔が見たくなって、とか何とか。
 それも本音の一つではあるけれど、本当の本音とは若干違うでしょ、なことをほざいたセッツァーを出迎え。
 あまーーーい甘い、雰囲気だけは、そりゃあ甘いぜ、旦那、な空気の中。
「一寸、久し振りだね」
 自室の応接セットに腰掛けたエドガーは、隣に座るセッツァーへ、にっこり、微笑んだ。
 ポ……なんて、頬まで染めて、見た目、とっても初々しい。
 ……が。
「……そうだな。少し、間が空いたな」
 初(うぶ)っぽい彼の態度に、可愛らしい、ああ可愛らしい、その辺の女よりも遥かに可愛らしい……なんて、にへら……と顔を崩したセッツァーが、邪な想いで全身を満たしているのとは裏腹に。
 実はエドガー、微笑みつつも内心では、かなりのパニックに陥っていた。
 ああ、どうしよう、二人っきりの、シチュエーションばっちりっ、な中でも、セッツァーは凄く落ち着いた風に一一セッツァーのにへら笑いが、エドガービジョンではそう見える一一笑ってる。
 やっぱり、同性愛の方面に関しては、私よりも彼の方が長けてるのかな。
 どうしよう、どうしよう。そうだったらどうしよう。
 侍医に色々聞いちゃった後だし、あんなこと求められても受け付けられないかも知れないし……、ああ、だからって、先手必勝で、私が彼を押し倒すのも嫌だしっっ!
 ……と。
 まあ、そんな思考がぐるぐると、脳内で回転しているが為。
 冷静になって、僅かだがある自分達の道程を振り返れば、ちゅー、をした後、己がフリーズしてしまったように、セッツァーも、せーの、でフリーズしていたことが思い出せる筈で、それが思い出せれば、セッツァーも自身同様、ちゅー、の後、何をしたらいいのか判らなかった、イコール、その手の知識は、二人どっこいどっこい、と云う結論が導き出されて然るべきなのだが。
 幸か不幸か……否、エドガーにとっては確実に不幸だったろうことに、彼はそれに気付けなかった。
「……なあ、エドガー」
「な、何っ?」
 一一故に。
 唯、名を呼ばれただけで、過剰な反応をエドガーは返してしまう。
 で、見つめてしまったセッツァーの瞳にクラっと来て、俯いてもしまう。
 どーーーしよーーーーっ! 凄い、熱っぽい視線で、こっちを見てるっ!
 ……てな具合に、内心のパニックを益々募らせて。
 この反応って……やっぱり、何処か期待してやがるのかな、と。
 熱っぽい視線一一セッツァーの邪全開光線が、エドガービジョンではそう見える一一に、それまで以上に頬を赤らめ、俯いた彼を見遣ったセッツァーが、誠に己に都合の良い解釈をしているのも知らず。
 一一だから。

「……そんなに、恥ずかしがるこたぁないだろ?」
 ……期待されてるんなら、やっぱり期待には答えないとな。こっちには『目的』もあるし。
「……えっと……で、でもね……一一」
 うわー、うわー、うわー、どうしようっ! 近付かれてもっっ! キスはいいけどっ!

 パニック状態のエドガーが、思わず俯いてしまったのを切っ掛けに。
 短いやり取りの裏側で、まっっったく噛み合わないことを、それぞれ考え。
 取り敢えず一一と云うか、何と云うか一一、互い想いを打ち明けてより、二度目になるキスを、雰囲気だけは甘い中、彼等は交わし。
 

11/29/2002 恐らく。それを人は、実力行使、と呼ぶ  その2
 
 ちゅぱ、と音がした訳ではないが。
 音がしない代わりに、どちらかと云えば、ねっとり、とした『ちゅう』を、二人は交わした。
 どちらの『ちゅう』がお好みか、それは、個人的嗜好やシチュエーションや、人生の端々に顔を覗かせる諸々の事情と云う奴によって左右される問題だと思うので、敢えてツッコミはしないが。
 貴方達、昼日中から、それですか、と云いたくなる物ではあった。
 一一だが、まあ、それは良いとして。
 本当に良いのかどうかは、知らないが。
 セッツァー的にもエドガー的にも、問題はその先にある。
 だから。
 実は二人、誰かに見られたらどうするんだ君達、なキスの最中。
 片や邪な目的を果たす為に、片や、ここから先に進まれたらどうしよう、と云う思いの為に、そこまで長いとさすがに肺活量疑います、な程長時間に渡るキスをしながら、さあ、この後一体どうしましょう、どうなるんでしょう、と、彼等は思考をぶん廻していた。
 故に、キスが長くなったんだ、と云う説もある。
 ……だが。
 それ程に長い、『ちゅう』、であろうとも。
 永遠に、時間を止めてみました、な如くに続けている訳にはいかない。
 何時かは、必ず終(つい)える時が来る。
 故に、当たり前のように、森羅万象の理に従い、彼等のキスタイムも、カーン、と終了を迎え。
 一一一一一一と。
 その終わりと共に、キスをする為にエドガーの背に廻されていたセッツァーの手が、するすると動いて、ふわん、と、エドガーを長椅子に押し倒した。
「……え? ちょ…………一寸、セッツァーっ?!」
 途端、困惑と云うか、驚きと云うか、そんな風な声が、エドガーから上がった。
 ……まあ、無理もなかろう。
 が、セッツァーは、僕は何も聞こえてません、とでも云う風に、悲鳴めいたエドガーの台詞を無視して、終わったばっかりのキスを再開しつつ、押し倒した相手の衣装の合わせを、もそもそと解き始めてしまう。
 一一一一セッツァーが、しようとしていること。
 先日の自問自答の最中に思い付いた、彼曰くの『良いこと』、それは。
 一々記すのも、なんだかな、と云う気がしなくもないが、Petting、と云う奴である。
 Petting一一ペッティング。
 (1) 抱いたり撫でたりして可愛がること
 (2) 性的行為の愛撫
 (3) 性的行為の中でも、身体の接触や性器以外の部位へ対しての愛撫を指す言葉
 …………と云う物だ。
 某事典に記されている通り、抱いたり撫でたりして可愛がること、と云う意味合いが、この言葉の筆頭にあるのなら、じゃあ、ペットの犬猫を抱いて撫でて可愛がることも、この言葉で表現出来るのか? と云う、どーしよーもない疑問が湧かなくもないし、するとこの場合、エドガーはセッツァーのペットに該当するのか? と云う、更なるどーしよーもない疑問が募らなくもないが、セッツァーがしようとしていることは、(2)及び(3)の意味合いなので、少なくとも、エドガーはセッツァーに、ペット扱いはされていない。
 ……で。
 何故、セッツァーが、唐突にこんなことをしようと思うに至ったのか、何故、これが、彼曰くの『ないす・あいであ』、なのかと云えば。
 その答えはやはり、先日行われた彼の自問自答の中にある。
 一一セッツァーは一応、自分には、同性愛の嗜好はない、と自認している。
 たまたま、惚れた相手が男だっただけだ、と。
 だから、先日悪友に教え込まれた、最終的行為に至る『覚悟』は未だにないが、押し倒して、きゅうって抱いて、かいぐり撫でて、もそもそ撫で回す、と云う物だったら、女相手にするのと大差ないだろう、きっと自分にも可能、例え相手が最愛のエドガーでも、ちょーっち、自分にも付いてる逸物を触るってのは抵抗感アリアリだけど、触らなきゃいいんだし。
 それに、最初に自分から押し倒して、Pettingしてみて、エドガーが心地よくなってくれたりなんかしたら、取り敢えずはそれで満足出来るだろうし、今後の『立場』に関して自分の方が優位に立てるかも知れないし。
 試してみて、どーーしてもエドガーが駄目そうだったら、やっぱり『立場』に対する対策って奴も、立てることは出来るだろう。
 ……と、まあ、これが、彼が導き出した、答え、『思い付いた良いこと』、の真相だ。
 ねえ、それって、実力行使って云わない? 恋愛と体のことに妥協はいけないんじゃなかった? お互い納得行くまで話し合うのがベスト、とかほざいてなかった? と、外野的には突っ込んでみたいが、所詮、セッツァーと云う男は、身勝手要素バリバリなので、こんな答えに辿り着いたのも、まあ……仕方ないっちゃあ、仕方ない、のかも知れない。
 身勝手を押し付けられている最中の、エドガーは多大に不幸だと思うが。
 一一で・も。
 幾ら、外野がエドガーさんに対して、合掌、と思っても。
 セッツァーの、『思い付いた良いこと』、は止まらず。

11/30/2002 恐らく。それを人は、実力行使、と呼ぶ  その3
 
 人間。生物学的に表記するならば、ヒト。
 サル目(霊長類)ヒト科の動物。
 学名は、Homo sapiens(ホモ・サピエンス)。
 もっと云うならば、現代人は『Homo sapiens sapiens』。
 蛇足ながら、それ以前は『Homo sapiens neanderthalensis』。
 ホモ・サピエンスとは、ぶっちゃければ、『賢い人間』の意。
 現代人類は、『賢い賢い人間』、と云えばいいだろうか。
 ま、知恵を持ち合わせた生き物ってことだ。
 でも、所詮、ヒトとて動物。
 どう頑張ってみた処で、逆らえぬ、本能、と云うものを持ち合わせている。
 一一そう。
 幾ら人間が、知恵を持ち合わせようとも。
 文明発生三大アイテム、火と車輪とネジを用い、世界を発達させること叶おうとも。
 本能って奴には、かなりの確率で、逆らえなかったりする。
 なので。
 セッツァーに押し倒され、お洋服を脱ぎ脱ぎさせられた瞬間は、うそぉぉぉぉっ?! 冗談や洒落なら、そこまでにしておいてくれっ! ……と、より激しいパニックに陥りつつも、心の中で絶叫するだけの余裕があったエドガーも。
 ジタバタジタバタ、大の男が二人横たわるには一一まあ、かたっぽの体はかたっぽの下にあり、かたっぽの体はかたっぽの上なので、横たわるってぇよりは、段重ね状態だが一一狭い長椅子の上で、今出来る最大限の努力です、とばかりに行っていた抵抗も、ふにゃん、と骨抜きにされる頃には、何を考えていいのやら、どうするのが己の為に最も宜しい道なのやら、判断が付かなくなっていた。
 ……仕方なかろう。
 『そう云う目的』を持ってして触られれば、冷感症を患っていない限り、『そう云う目的』に相応しい反応を示すのが、ドーブツってものだろう。……多分。
 思考だって、普段通りには廻ってくれなくなるだろう。…………多分。
 で、この場合……と云っていいのかどうかは、無責任にも判らないが。
 エドガーにとって、誠に不幸なことに。
 ヒトがヒトであるが故に、だと思うが、ふにゃんポイント一一まじめちっくに語るならば、性感帯って奴に、男女の差は殆どないのだ。
 各性別に準じてヒトが持ち合わせる性器部分は別だけど。
 そんで以て。
 今現在、エドガーのお洋服の前をいそいそと剥いで、珠のお肌をまさぐりまさぐりしつつ、ドッカ、と上に乗っている男は、そりゃあ陛下ってば女ったらしなのよ、と名高いエドガーとタメ張るくらい、対女性経験値が高い。
 百戦錬磨、色事師ですね、貴方、ってなもんだ。
 だから。
 ふにゃんポイントその1、首筋、をペロってされちゃったり。
 ふにゃんポイントその2、お耳、にフウ……って、息吹き掛けられちゃったり。
 ふにゃんポイントその3、乳首、をツンツンされながら、ふにゃんポンイントその4……って、いい加減、以下略。
 ……とまあ、そんな風にされてしまうと、彼だって、オツムも体も、ぽわんとして来る。
 しかも、相手は自分とタメ張る『手練』。
 それも、愛しているのっ! な相手。
 パニックに陥った後にやって来た、オツムも体もぽわん状態で、例え、後先考えられずとも。
 決して、嫌なことじゃなかったのだ、エドガーとしては。
 …………なので。
 後々、冷静になった時に、きっと真っ青になるだろう彼に対する、深い深い同情は禁じ得ないが、ある意味自業自得なことに、セッツァーにされることに、気持ち良さ、と云うのをエドガーは覚えてしまい。
 抵抗なんて全く出来ません、一寸する気もないです、だって気持ちいいしー、って、蕩けちゃった顔を、身勝手要素バリバリな恋人に見せてしまったものだから。
 
 本日のWinner、セッツァー・ギャビアーニ。
 今後の方向性、決定的、となってしまった訳で。
 ………………心より、合掌。
 


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