キスされて。
押し倒されて。
お洋服脱がされて。
珠のお肌を撫でられて。
でも、ふにゃん、となった処で、今はここで止めておこうね、と、『お許し』を貰って。
抱き合ったまま、イチャコラお話タイムと相成った後も、ぽわぽわと、雲の上に浮かんでいるみたいな心地でいて。
まるで、マタタビ喰らった猫のように、ふわふわ、一晩を過ごして。
翌朝、じゃあ、又な。近い内に逢おうな、と、耳元で囁いた恋人を見送って。
……よーーーーーーーーー……やく。
漸く、エドガーは、冷静になった。
……貴方、そんなに良かったんですか? と、突っ込んでみたくはあるし。
中々やるな、セッツァー・ギャビアーニ、と唸ってみたくもあるし。
何の、かは兎も角、後学の為に、セッツァーの手練さ加減を、身を持って知ったエドガーに、突撃レポートを敢行してみたくもあるが。
それは、ちとこっちに置いておくとして。
兎に角。
一夜が明け、恋人と別れ。
冷静になった後。
一人きりになった自室で、握り拳を固め、ぷるぷると震え、顔面蒼白になり。
「私に一体、どうしろとっ!!!!」
……とエドガーは絶叫した。
「セッツァーの、馬鹿ーーーーーーっ!!」
……と、ひっ掴んだ羽枕を壁にぶん投げ、八つ当たりもした。
だがしかし。
声を限りに叫び、枕に八つ当たりをしようとも。
それで、事実が変わる訳ではないし、あんな顔、あんな姿、あんな声一一まあこれは、マタタビ喰らった猫状態だった時に、きっとこんなザマを曝しただろう、と云う、彼自身の想像に基づくものではあるが一一を、恋人に見せてしまった事実も覆らない。
何がどうあろうとも、昨日の勝者はセッツァー・ギャビアーニなのだ。
昨夜の時点で、優位に立ったのは銀髪のギャンブラー。
そして、恐ろしいことにあの男は、一度掴んだ優勢を、そう簡単には手放さない質。
だから。
「じょおっっだんじゃないっ! どうしてあんな、抜け駆けみたいな、不意打ちみたいなやり方で、彼に優位に立たれなきゃならないんだ、セッツァーの、馬鹿ーーーっ! 人でなしっ! 鬼畜っ! 色魔っ! 自己中っ! 私に一体、何を求める気なんだーーーーっっっっ!! 覚悟を決めろとでも云うのかっ! ……覚悟? 覚悟……? 覚悟ぉぉっ?!」
冷静になった途端、己が立場の劣勢さ加減と、惚れた男の性質を、すぐさま悟ったエドガーは、再度の絶叫を放ったが。
ああ、現実はシビア。
彼の嘆きが届く先は、恐らく何処にもない。
彼が今、嘆くべきは、呪うべきは、セッツァーの手練さ加減にほだされちゃった、夕べの己。
…………なので。
「ああ、もう………………。どうしよう………………」
散々叫んで、散々八つ当たって、寝乱れたままのベッドの上に突っ伏したエドガーは。
バシバシガンガン、壁にぶつけてヨレヨレにしてしまった御愛用の枕を抱え、まぁるくなって。
ちょっち、泣き濡れた。
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