12/17/2002 現実 王宮編
 
 膝の上に乗せていた、問題の本を。
 ひとたび、ベッドの上へと避けて。
 エドガーは立ち上がり、自室を横切ると、扉に鍵が掛かっているかを、念入りに確かめた。
 『歴史書』と思えば、それを読み耽るさまを、誰に見られても、恥ずかしいなどと云うことはないのだが。
 彼にとってその本は、歴史書であって歴史書でないので。
 ページを繰ってる姿など、エドガーは誰にも、見られたくなどなかった。
 故に彼は、ほんっきで念入りに、鍵が掛かっているかいないか、確かめて、確かめて。
 枕辺のランプ一つだけを残して、部屋の明かりを落とし。
 ぱらりそろり、ページを繰った。
 一一一一開かれた、本の一ページ目は。
 整えられた体裁は、歴史書、と云う言葉に相応しく、堅苦しい序文で始まっていた。
 だが。
 そんな風に形式ばった、どうしてこの本を記すに至ったか、などと云う文章は、エドガーにはどーでも良くて。
 己が欲求に正直に、ちゃっちゃと彼は、序文を飛ばす。
 序文が終わり、中表紙が登場し。
 中表紙も、その後に続いた目次も、さかさか、かっ飛ばして。
 どきどき、としつつ。
 漸く辿り着いた本文に、彼はちらりと目を走らせ、読み出し。
「………………は?」
 が、そこで。
 彼は己が目を疑い。
 ぱふん……と、一度、本を閉じた。
 結構厚みのあるその本を、再度ベッドに放り出し、立ち上がり。
 暗過ぎたのかな、と彼は、寝所の明かりを、少しばかり大きくする。
 そうしておいて、再びのチャレンジっ、とばかりに、先程と同じ姿勢を取り、同じように本を抱え、同じページを開いて。
「……………………えーっと……」
 そのページに踊っていた文字達を、明るさが足りなくて、見間違えた訳ではなかったことを知った。
「……ばあや……。恨むよ……」
 幾ら同性愛に関することが書かれているとは云え、たかが一ページ目を開いただけなのに、エドガーは額を抱え、瞑目し、ばあやに向けて呪詛を呟く。
 一一一一歴史書、だと思っていたのだ、エドガーは。
 いや、確かに、その本の表紙には、歴史云々、と云う言葉が綴られているから、歴史書は歴史書なんだろうけれども……。
 本と対面した途端、目の中に飛び込んで来た、同性愛を示す単語と、歴史云々、と云う単語の所為で、本の正しいタイトルを、それ以降一度も、エドガーは把握しようとはしなかったから。
 誤解したのだろう。
 だから、一ページ目を開いて直ぐ、衝撃を受けたのだろう。
 何故ならば。
 件の本。
 歴史書は歴史書、でも。
 物凄く特殊な歴史、ぶっちゃければ、男であるにも関わらず、春をひさぐ運命を辿った少年達が、如何にしてその世界に『溶け込んで』行ったか一一則ち、とっっっっっ……ても簡単に云えば、男同士で致す為に、そんな少年達が、どんなことを教え込まれたか、そしてそのやり方、が、大変具体的に、記載されていたから。
 勿論、挿し絵付きで。
 
 ああ、蛇足ながら。
 どうしてそのような本を、ばあやが持っていたのかは、多分永遠の謎だ。
 

12/18/2002 学んだこと
 
 己が選択を、心底呪い、後悔しつつも。
 他人様の『ンン』を、しっかりはっきり覗いてしまったセッツァーと。
 何だかんだと言い訳を付けて、あやしーー……い本を読んでしまったエドガーが。
 その夜、とっくりと学んだことは。

 いち・同性同士だろうが、異性同士だろうが、やることは変わらない。挿入先が違うだけ。
 に ・慣れがないと、『どっちも』、物凄く痛い…………らしい。
 さん・その痛みを快感へと変えるまでには、日数が掛かる。
 よん・本来ならば、その為には、『訓練』が必要。
 ご ・当たり前っちゃあ当たり前だが、男は『濡れない』。
 ろく・だから、潤滑剤が必要。
 なな・結合部分が結合部分なだけに、病に掛かりたくないんだったら、『避妊具』を用意する。
 はち・……そう云った、諸々の事情の所為で、事前・事後の準備が大変。
 く ・やっぱり、そう云った諸々の事情の所為で、実は互い、コトに及ぶ為には、とっても体調を整えなきゃいけない。
 とお・ああ、やっぱり、簡単に願いは成就しない。

 ……と云う。
 おおまかに挙げればこんなものですな、な、幾つかの事柄だった。
 ま、一言で云うならば。
 男同士で結ばれるって、大変よねー……、と云う明白な事実を、散々周りを巻き込んで、ようやっと、彼等は認識したのだ。
 未だに、知識の上でのみの認識ではあるけれども。
 だが、何を云ってみた処で、何を知ってしまった処で、ここまで来ちゃったら、僕達はもう引き下がれません、な性格を彼等二人共にしているので、受難は受難だけれどー……で、話は終わるかと思いきや。
 一つ、余分なことを知ってしまうと、次から次へと、知りたいことが出て来るのが、人情……否、人としての性、もとい、この場合は切実な欲求。
 なので彼等は、再び、腕を組んで、それぞれのいるお空の下で、深く深く、悩んだ。
 …………だって。
 二人はそれぞれ、それぞれの場所で。

 学んだこと1、それはいい。
 同性間でも異性間でも、やることは一緒ならば、問題はない。
 学んだこと2、これも多分……何とかなる。きっと、『痛くない方法』も、世の中にはあるだろうから。
 学んだこと3、これもまあ……何とか。
 互い長い付き合いになれば、自然と慣れる日も来るだろう。
 が、学んだこと4、これは曲者だ。
 痛いことを快楽に変える為の訓練って……何?
 何をどうやって、何処をどうして訓練すると云うのだろう。
 学んだこと5と6、これも……いい。そう云う物が必要だと云うならば、何とかするのみ。
 でも……学んだこと7。
 避妊具…………。避妊具……ってさ……。羊とか山羊とか牛の腸とか……。後は魚の浮き袋、とか……(※)。……そう言う物から出来てる訳で……。それを使って……一一一一ああ、抵抗が。生理的、抵抗が。
 それから、学んだこと8。
 事前事後の準備って……準備ってぇぇぇ…………。
 御不浄に行っとけ、とか、風呂入っとけ、とか、繊維質の多い物は食べちゃ駄目です、とか……そんなこと云われたって……思わず、遠い目をしてしまう。
 ……学んだこと9……も。
 体調整えておいた方がいいよ、と云われても……。
 そりゃ、何をするにも、体調は整えておいた方がいいんだろうけれど、性行為と云う物に対する感覚は、所詮性行為、な訳で、ハードな運動をするノリはなく……ああ、でも、そんなにハードなの?
 
 一一一一と。
 『学んでしまったこと』に対する、数々の思いを、彼等は過らせてしまったので。
 セッツァーも、エドガーも。
 益々、どうしたらいいのか、判らなくなった。

 ………………彼等が、真に結ばれる日は、未だ未だ遠い。


 ※ 作者注 羊や山羊の盲腸や膀胱、牛の腸膜、魚の浮き袋。
 これらが、避妊具として使われてたのはホントです。
 因みに、我々が良く知っているゴム製避妊具の原形が出来たのは、日本の時代で云う処の、江戸時代末期。
 本格的なのが出来たのは、明治初期。
 なので、このお話に出て来る避妊具は、動物の腸とか魚の浮き袋です。 ※
 

12/19/2002 ほんでもって、デート。そんな状態なのに
 
 彼等が、それぞれ同時進行で、得て良かったんだか悪かったんだか、今一つ判断の付かない知識を手に入れて、数日。
 内心に、どーしよー、とか、困った、とか、マイナスの感情だけを抱えつつ。
 それでも、前々から約束していた逢瀬の日がやって来てしまったので。
 最愛の人に、会いたいんだけど会いたくない、と云う、哀しきジレンマを抱えて、セッツァーとエドガーの二人は顔を合わせた。
 その日の逢瀬の舞台はフィガロ城。
 相変わらず、芸がない。
 何処か遠くに出掛けてみれば、雰囲気が変わったり、気分が変わったりして、余りくどくど悩むこともなく、その場のノリとかフィーリングとかで、二人してお悩み中の『諸問題』も、ひょっとしたら片付いてしまうかも知れないのに。
 一一もうこの際だ、言葉を選ばずに云ってしまうが、そりゃあ、男は女と違って、抱くにしても抱かれるにしても、『てくにっく』、って奴が必要だけど?
 彼等は共に、いい歳した大人で、女性相手の経験に乏しいって訳じゃあないんだから、もしかしたら何となるかも、と云う確率は、低くはない筈だ。
 基本のやり方は押さえたんだし。
 でも、彼等はコトに及ぶに際して、余りにも、真摯……と云うか、生真面目に考え過ぎているので。
 下準備がー、とか、揃えなきゃいけないものがー、とか、外野的には、何の準備が必要で、何を揃えないといけないんですかー? と、つい、顔全体に鬼畜な笑みを浮かべて問い質したくなるようなことで、お二人さん、頭は一杯。
 んで、そういった事前のホニャララーが必要なら、勝手知ったる何とやら、な場所がいいかなー、なんて、思ったりなんかもしてるので。
 逢い引きの場所は相変わらずのワンパターン。
 ……これを、世間では悪循環、と云うのではなかろうか。
 だがしかし。
 彼等はそんな可能性にも気付かず。
「……久し振り」
「…ああ。会いたかった」
 などと、一見穏やかほんわりラブラブ、でも背中には冷や汗掻きまくり、なおデートを、辿々しく始めた。
 一一一一さて。
 唐突だが、彼等二人の、前回のデートを、ここで思い出してみよう。
 前回彼等は、セッツァーの邪な企みの所為で、ちゅーをして、その先にまで、関係を進めてしまった。
 進めた、のではない。
 『進めてしまった』。
 なので。
 今宵一晩共に過ごすならば、そこで行われなければならないのは、更にその先の行為でしかないと、セッツァーもエドガーも、頭っから信じ込んでいる。
 冷や汗掻く程どうしていいのか判らずに、ものごっつい勢いで焦ってるのなら、ふんわり柔らか、羽枕の雰囲気でも拵えて、とおてもソフトなラブラブーの中、デートを終わらせればいいものを。
 ああ、マニュアル君って使えない。
 …………って、ああ、そうではなくって。
 故に。
 午後の内にはお茶をして。
 日が暮れた頃に御食事をして。
 あら、夜空にはお月様、となった頃にはお酒を飲んで。
 前回がああだったんだから、何が何でも今日は、絶対に関係を進めないと駄目なんじゃないだろうか、否、進んでしまう筈っ! と云う思いで凝り固まったまま、マニュアル君なお二人さん、『さあ、夜はこれからさー』な時間を迎え。
 それと知らず、その夜の、喜劇の幕を上げた。

 ………It's a show time.
 

12/20/2002 セッツァーさん、焦る
 
 眼前に、頬を染めつつ座っている、エドガーさんを見つめている、セッツァーさんの心境。
 
 …………えっと。
 ………………ええっと……。
 ……うあ?
 俺、は……女を抱く時、どうしてたっけか。
 お、思い出せない……。
 そんなこと、頭で復唱しつつヤッたこたぁねえし、一々確認したこともないし……。
 余りにも、当たり前のこと過ぎるからな……。
 ……っと……。たーしーかー。
 ええっとだな……。
 抱き寄せるだろ? んで、押し倒すだろ? んで……キスとかするだろ? で、服剥ぐよなぁ……?
 ああ、そこまではいい。
 ……で、だ。まあ、ごにょごにょーな、セオリーってーか、『順番』、こなして……。
 そうだ、それは、いいんだが……。
 一一ああああっ! 何処で、どのタイミングで使うんだ、避妊具っ!
 んな物の世話になったことなんざ、こちとら皆無だっ!
 あー、でもその前にぃー。
 どうすりゃいいんだ……?
 一一判ってる……判っちゃいる……。
 男と女のデキは違うから。
 違う……から……。それは、十分判ってるから……。
 女をイかせる時のようなやり方でー、こいつがー、気持ち良くなるとはー、思えないしー…………。
 まあなあ……俺も男だから? どうしてやれば男がイクかー、なんてのは、知りたくもないが知ってるからなー。
 『戴く』前に、それをしてやれはいいのかなー、程度の想像は付く……んだが。
 手淫ってーのもなー、口淫ってーのもなー……。
 なーんとなーくなー……。
 …………ああ、エドガーにも、避妊具を使わせる、この案はどうだろう。
 男のナニに、直接触れるよりは抵抗が少ない気がする。
 ……が、直接ナニに触れるのと、魚の浮き袋を握り絞めるのと、どっちが俺にとって幸福なんだろうか……。
 究極の選択のような気がする……。
 魚の浮き袋……。牛や羊の腸や膀胱よりはマシだと思ってそっちをセレクトしたが……、嫌さ加減は変わらないんじゃなかろうか。
 って、ああああ、そんなこと、今更考えてみたってしょうがない。
 それはもう、覚悟を決めて、腹を括るしかない。
 兎に角、エドガー押し倒して、キスでも何でもしてっっ。
 ……にしても、問題なのは、避妊具使うタイミングだよなー。
 行為を中断して、それを付けるってのは……。
 どう想像してみても、間抜けなこと、この上ない気がしてならない……。
 

12/21/2002 エドガーさん、焦る
 
 相手が、真実何を考えているかを知らず。唯、じーっと見つめて来る紫紺の瞳に照れて、焦ったエドガーさんの心境。

 えっと、確か……。
 確か、ばあやが渡してくれた本には……えっと……。
 コトに及ぶ前に、御不浄に行くこと、って書いてあったような……。
 …………御不浄……。御不浄……トイレ、か……。
 トイレで何をするか、の、何、の部分も、本には書いてあったけど…………。
 ヤだなあぁぁぁぁぁぁ……。
 すっごく、嫌だ。
 お腹、痛みそう……。
 激しく果てしなく、下世話だし。
 大体、要は、結ばれました、ぶっちゃければ、SEXをしましたって事実があれば、多分、私もセッツァーも満足なんだから、駄目なのかなあ、そのう……あそこを使わずに、って云うのは……。
 でも、男の生理って、そうじゃないんだよね……。
 判る。私も男だから、判る……。
 だーけーどー。
 結局は、快楽がそこにあればいい訳だからー。
 手淫とかー、口淫とかー………って、それは私が嫌だ……。
 何となく、それだったら未だ、セッツァーを大人しく受け入れた方がいい、とすら思える……。
 抵抗有りまくりなんだってばっ! そもそもっ!
 でもねえ……今更ねえ……引くに引けないしねえ……。
 恋人とは結ばれてみたいって云うのは、事実だしねえ……。
 一一一一痛いのかなー。
 すっっごく痛かったら、嫌だなあ……。
 裂けちゃったりしたら、どーしよー……。
 ……怖い。
 ものすっっごく、怖い。
 処女な女性って、皆、こんな思いするのかなああ。
 可哀想だなあ、女性って。
 でも、これ故に女性が可哀想なら、私も十分可哀想だ……。
 …………って、ああああ、それよりも、御不浄……。
 さーて、どのタイミングで行けばいいんだろう……。
 何時、席を立とう……??
 ……うう、何か、泣けて来た……。
 

12/22/2002 『以前』の問題 その一
 
 この上もなく間抜けな己の姿を想像してしまって、一寸どうしたらいいのか判らなくなりそうなセッツァーと。
 ある意味、逞しい想像力の所為で、結構な恐怖を覚えてしまって、泣きそうな心境に陥ってしまったエドガーは。
 それでも、見た目『だけ』は情熱的に、視線を交わし合って。
 えーい、ここで何時までもこんなことしてたって、埒なんかあかないっ! と、半ば破れ被れに抱擁を交わし。
 エドガーの自室の奥の、寝所に向かった。
 今、互いの眼前にいるのが、女人であるならば。
 異性相手の色事は、百戦錬磨です、な二人のこと、何一つとして躊躇うことなく、焦ることなく、そりゃあスムーズに、『肉体的』にはべりー・すぅいぃと、な一夜を迎えられたんだろうが。
 今のお二人さんは、御存じの通り、なので。
 ドドンとでかい天蓋付きのベッドを前に、あらお兄さん、そのお年でチェリーボーイですか? とからかいたくなるくらい、彼等はカチコチに固まってしまう。
 が、それでも。
 甲斐性と云う奴が、例え欠片でも存在していなければ、漢と書いて男と読むの、では有り得ないとセッツァーは思っている質だから。
 ままよ、と彼は、いざ横たわらん! な枕辺で、ぼーっと突っ立っているエドガーの肩を抱き寄せ、唇を近付けた。
 ……………しかし。
「あ……。あの、セッツァー、御免っ! その、一寸っ!」
 むちゅう、と唇同士が接触を果たす直前、するりとエドガーはセッツァーの腕をすり抜け、意味不明な言い訳を叫び、駆け出すと、部屋を飛び出して行ってしまった。
「……何だ……? 一寸? ………………あ」
 なされた仕打ちに、一人取り残されたセッツァーは、へっ? と一瞬、首を傾げたけれど。
 直後、盛大に頬を染め、慌てた風に飛び出て行ったエドガーの、云わんとすることに思い当たり。
 口許辺りを右手で被って、彼は真っ赤になり俯く。
「そう云えば、男娼館のマダムが、そんなこと云ってたっけな……」
 そして彼は、必要だったんだか不必要だったんだか、今以て判断の付かない、『覗き見』と云う名のお勉強をした夜、己の隣で延々、要らんことをそりゃあ具体的に説明してくれた、マダムの言葉を思い出し。
「大変だな、あいつも……」
 誰の所為で、君の恋人が大変な憂き目に遇っていると、と突っ込みたくて仕様がない、さも、他人事です、な一言を呟いた。
「……ってことは多分……。もしそうなら、当分帰って来ないだろうから……」
 一一エドガーが出て行った訳を察し。
 だから、君の所為だってば、と、外野的には云ってやりたくって仕方ない独り言を、再びセッツァーは吐き。
 彼は、未だまっさら綺麗♪ な寝台を見下ろして、腕組みを始める。
 じーっとベットを見つめ。
 唯ひたすらに、見つめ。
 きょろきょろと辺りを見回し。
 何かを彼は、ひたすらに、考えている風だった。
「そうだよなあ……。それは、ヤバい……だろうなあ……」
 ……が、やがて、彼は。
 脳内で展開していた考え事に、一応の決着が付いたのか、又、独り言を零した。
 するりと腕組みを解き、一つの皺もなくメイクされたベッドのカバーや毛布を剥いで。
 どうしよう、とばかりに、セッツァーは首を傾ける。
 一一彼が今まで、腕組みをして考えていたこと。
 男の体は女とは違うから。
 どうしたって、潤滑剤とやらが必要だから。
 このままコトに及んだら、ベッドのシーツが潤滑剤の所為でぐちゃぐちゃになって、朝になったら「まあ、大変」なことになるのではないか。
 だったら、そうなる前に、何か敷いておいた方がいいんじゃないかなー、と云う考えに基づき。
 何を敷きましょうか、とセッツァーは、深々と、首を傾げ続けた。
 


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