さて。
大の大人の男が二人、ごろりんと横たわっても、スペース余りまくり、な巨大ベッドを見下ろして、セッツァーが首を捻っていた頃。
御不浄、トイレット、雪隠、化粧室、手洗い、e.t.c…………まあ、呼び方は何でもいい、そんな場所に篭って。
ほう……とエドガーは溜息を付いていた。
だって……そう、だって。
お通じを、促さなくてはならないから。
盛大な溜息を吐き出したくなる彼の気持ちは、想像に難くない。
別に、エドガーは便秘体質一一ああ、生々しい……一一と云う訳ではないので、無理矢理にお通じを促す手段を取らずとも大丈夫そうだが……つーかそもそも、避妊具の材料が魚の浮き袋や牛の腸です、な時代の浣○一一さすがに、伏せ字にさせて下さい一一など、自力で使えるようには出来ていない。
この世界では、浣○は、とても立派、且つ重要な、医療行為なのだからして。
気軽には出来ないんだ、これが。
……って、ああ、ヨタ話はどうでもいい。
兎に角、そんな訳で。
御不浄に篭って。
今、精神的ダメージを、些細な程度でも受けたら、首吊っちゃうかも、と云うくらい、どんより、とした空気を纏って、エドガーは。
一一一一以下、余りにも彼が不憫なので、割愛一一
「あー、もー、嫌だぁぁぁぁっ!」
割愛された、ほにゃららーな出来事の後。
『それ』が済んでも彼は、御不浄の片隅でちんまり蹲りながら、一人呻いていた。
『出来事』は。
うん、何とか、終わった。
でも。
彼には未だ、この『先』がある。
一一一一又、少々話は脱線するが。
某世界ではポピュラーな、トイレットペーパーなる物の歴史は、実はとても、浅い。
浅い処か、某世界では未だに、世界人口の三分の一弱しか、トイレットペーパーと云う物を使用していない。
んで。
エドガーの故郷、フィガロは、砂漠が国土の大半を占める。
と云うことは、水は貴重品な訳で、水洗式の御不浄は、フィガロ城と云えどもある筈もなく。
故に、某世界のトイレット事情同様、砂漠の御国にてのトイレットペーパーの代用品は、『砂』、だ。
しっかりきっぱり、『砂』。
ええ、あの、『砂』。
ロープや海綿、石や土塀、それよりは、良い……だろう、多分。
だから。
エドガーは。
自分が傷付かない為にも、セッツァーが傷付かない為にも、ソコを、洗って来なきゃならないので。
その事実を鑑み。
ほとほと、嫌気が差して来て。
「何処か遠くに、旅立ってもいいかなー……」
御不浄の片隅で、膝を抱えたまま、彼は。
ぽつりと呟き、泣き濡れた。
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