男は。
何が必要って、度胸だ。
こう、と決めたら無言の内に、且つ迅速に。
いけいけ、Go、Go、目指すは地上の楽園さっ!
据え膳喰わぬは何とやら、と云うじゃないかっ!!
………………であるのが。
ある意味で、正しいと思う。
あ、いや、そう在るのが、ある意味では正しいと、セッツァー『は』思っている。
なので、彼は。
多少卑怯なのは否めないが、湯当たり起こした恋人が、遥か彼方に意識を素っ飛ばしている内に、有り難く頂いてしまいましょう、と。
いそいそ、支度を始めた。
今は未だ、真っ昼間だと云うのに。
こそこそと部屋のカーテンを閉め、ジリジリと部屋の明かりを落とし、もぞもぞと服を脱いで。
前回は植物性油だった、が今回は、女衒の親分さんの所から頂いて来た潤滑油一一どのツラ下げて、譲り受けたんだ? とは思うが一一も、ちゃーんとお手々にヌリヌリして。
恋人の、きゃあああ、な箇所にも、ちゃーんとヌリヌリして。
一瞬だけ、躊躇いを覚えてしまったけれど、最後にジーーーッと、己の『躰』も見下ろして、自身の、あああああ、な部分にも、ヌリヌリヌリ一一塗れる程、臨戦体勢バッチリだったんだな、と云うツッコミは、しないでやって頂きたい一一、して。
美味しいモノを頂く時には、きちんと手を合わせて感謝を捧げるのが礼儀、と、暗くなった部屋の中、相変わらずグデンとしているエドガーに合掌を手向け一一何か違う気がするが一一、彼は、もふもふもふもふ、恋人にのしかかった。
……誠に嫌な擬音だが、それ以外、例えようがない彼の姿だったので、各方面には御容赦頂きたい。
そして、彼は。
いちお、キスして。
それでもエドガーが、ほにゃーんとしているのを確かめ。
つるん、と一一ああ、これも嫌な擬音だ一一、前回はここで『痛い』と叫ばれたんだよなー、と、先の失敗を思い出しながら、ちょっちロンリーな気持ちになって、侵入と云うか、侵略と云うか、を致し始める。
が、とってもとってもとってもとっても一一以下略一一、彼にとって幸いだったことに。
意識が垂れ、尚且つ、全身に力が入りません、なエドガーの躰は、喚くことも叫ぶこともなく、それを受け入れてくれた。
一一一一故に。
この有り様の国王陛下より、速攻悲鳴が上がったら、もう生涯プラトニックを貫くべきとしか言えなかったのだろうが。
刹那、セッツァーもその覚悟をしたが。
無事……なのかどうかは知らんが、事もなく、エドガーは若干顔を顰めただけで、拒絶反応は示さなかったので。
思わず気を良くしたセッツァーは、『侵略部隊』の数を増やしてみた。
そうして。
二度目の勝利を、彼は手にする。
………………ヤッてる当人も、そりゃあもどかしいだろうが。
実況中継をしたためているこちらも、そりゃあもどかしい。
もどかし過ぎる展開だ。
どーせ、卑怯であるのは否めないこの状況で頂こうと思うなら、とっとと頂いて頂きたい。
男は度胸じゃなかったのか。
据え膳喰わぬは男の恥だろう?
……と、外野は云いたくなるのだが。
セッツァーはその時、彼的には前回よりも『大幅』に進んだ『コト』に、至極深い満足を覚え。
どうせなら、相手も気持ち良い方が、と、意識がクタッてる相手にそんなこと思い遣っても、余り意味がないんじゃ? と問うてみたい、純情少年のよーな『優しさ』を発揮して、『そのまま』の体勢で、恋人に、愛撫を施し始めてしまった。
世の中には、疾風怒濤、と云う言葉もあるのに。
ついつい、愛溢れる思い遣りなんぞを、発揮してしまったが為。
ものごっつい『違和感』に、漸くクタっていた意識を表層に引き上げたエドガーと、うにゃうにゃの最中、ばっちり目が合ってしまって。
「…………せっつぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
セッツァーはエドガーに、盛大な平手打ちを喰らった。
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