授かり物
08/10/2002
……どうして?(記載・エドガー)
XXXX年 XX月 XX日
……どうしてだろう。
今日になって、急に。
気持ち悪かったのも、お腹が痛かったのも、潮が引いたように、消えてしまった。
やっぱり、夏バテ……だったのかな。
あの泉で逢瀬をしてから、二ヶ月間程、具合が悪かったから……心配して、セッツァーが顔を見せに来てくれたのも…良かったのかな…。
ほっとしたのかも。
……でも、ねえ……。
幾ら、病は気から、とは云え。
恋人の顔を拝んだだけで、瞬く間に体調不良が改善される程、私の思考も体も、単純ではないと思うんだが……。
ま、いいか。
08/11/2002
有りがちだよな……(記載・セッツァー)
XXXX年 XX月 XX日
昨日になって、不意に。
やけに、すっっっきりした顔で。
もう、吐き気もしないし、腹も痛くない、とエドガーが言い出した。
……まあ、体調不良が治ったってんなら、それはめでたいことだし。
心配で去り難かったフィガロからも、又、旅立てるってなもんだが……。
何かが、引っ掛かる。
どうも、な。
例の、泉でのことが、引っ掛かって仕方ない……。
…が、ま、良しにしとくか。
あいつの具合が治ったことだけを、純粋に、喜んどこう。
……唯、な。
有りがちな話、だが……嵐の前の静けさって言葉が、この世にはありやがるんだよなあ……。
………………。
厄介事に巻き込まれる前に、フィガロからは離れておくとするか……。
08/12/2002
結論から云えば(記載・『天の声』)
一一さてさて。
そんなこんなで。
泉の畔にて、おでぇと、をされた日から、体調を崩し、寝込みがちだったエドガーと、そんな恋人を気遣い、フィガロを訪れたセッツァーの、何ともすっきりしない二ヶ月間は、瞬く間に、過ぎた。
……何となー……く、某日の日記で、セッツァーが記載していた嵐の前の静けさ一一則ち、これから起こる『嵐』とは一体何ぞや、と云うことに関する想像が、付かなくもないが。
……馬鹿馬鹿しいから、あんまり想像したくないなー…って事実は、ま、さておき。
兎に角、あれから二ヶ月が経ったある日、何の前触れもなく、エドガーが体調を戻したから。
もう、放っておいても大丈夫だろうし、うすらぼんやり嫌な予感もするから、とっととフィガロを離れよう、と、セッツァーは『逃げ』を企んだ。
……が。
っとに、男って奴はさー、どうして先ず、逃げなきゃっ……って、保身に走るかね? と眉を顰めたくなる女人達の溜飲を下げるかのよーに。
結論から云えば。
エドガーが復調を果した翌日、すたこらさっさと、セッツァーが、フィガロを後にすることは、叶わなかった。
…………何故なら。
08/15/2002
何でも叶えてあげるって云ってるでしょ?(記載・泉の神様)
(XXXX年 XX月 XX日 エドガーとセッツァーの元に届けられた、泉の神様よりのお手紙より抜粋)
二ヶ月くらい前にねー。
君達、僕んトコの泉で、願掛けしたでしょー?
子供欲しいですーって。
忘れちゃったかなー?
でも、僕は聴いちゃったからねえ。叶えない訳にはいかないんだよねえ。
だから、受け取ってねえ。嫌とは言わせないよーん。
冗談だろうと洒落だろうと、願いごとは願いごとだからさ。
神様やってるこっちとしては、やっぱりねえ。
威厳、とか霊験、とか、損なっちゃうの、マズいんだわ。
……ま、問答無用で、はーい、あげるぅ…ってのも、可哀想かなー、なんて思ったからねえ。
二ヶ月間、待ってあげたよー。
ママさんになる君、たっぷり、妊婦さんの感覚、味わえたでしょ?
パパさんになる君の方は、どうだか知らないけどさ。
一応二人共、心の準備って云うの? 出来たよねぇ。
だから、はーい、プレゼント。
願いごと、叶えてあげたよーん。
…あ、そうそう。
君達のお願いね、一寸、具体的じゃなかったから。
リクエストが謎だった部分、適当に処理しちゃったけど、いいよねー。
問題、ないっしょ?
子供は多い方がいいかなーって思って、双児ちゃんにしてみたから。
大サービスで、男の子と女の子。
神様って云うのは、基本的に優しく、寛大に出来てる訳よ。
ま、喜んでよ。
君達の容姿と性格、適当に混ぜ合わせて、こしらえてみたからさー。
うーん。我ながら、ラブリーだと思うよー?
可愛がってあげてねえ。正真正銘、君達の子供だからー。
じゃあねーー。
by 泉の神様
08/16/2002
神様よりの戴きもの(記載・『天の声』)
by 泉の神様
……などと、さらさらりん、と署名された、何とも感想の告げ難い手紙が、セッツァーとエドガーの元に届いたのは、エドガーが体調不良から脱出した翌日……則ち、セッツァーが、すたこらさっさー、と、フィガロよりの『逃走』を果そうとしていた日の、真っ昼間、だった。
「じゃあ行くから。又な。体、気を付けろよ、無理なんざ、するんじゃねえぞ」
……と。
そんなにクドクド云うんなら、もう少しフィガロに居なさい、貴方、と外野が云いたくなる勢いで、色々諸々、セッツァーがエドガーに申し渡し、エドガーはエドガーで、うん、とか、君もね、とか、お城の一室で、いちゃいちゃラブラブ、彼等が別れを惜しんでいた時。
開け放たれたガラスの扉から続くベランダの方角から、ぶぅわっっさぁぁぁぁっ! ……なんて、巨大な羽音がし。
何事っっ! と、ちゅう……って、お別れのちゅう、なんぞをしていた彼等が、抱き合ったまま、不審な音の方向を振り返ってみたら、そこには。
鳥類として、それはどうなんだ? と云いたくなる程見事にでっかい『赤チョコボ』が、籐で編まれた、これ又大振りの籠を銜えて舞い降りていて。
くえええええええええええええ! とけたたましく鳴く赤チョコボがベランダに『落とした』籠の中には、すやすやと眠る、うん、一応はラブリーだね、と言える赤ん坊が『二匹』程、入っており。
え、捨て子っ? それとも、何か事件っっ? ……と、赤ん坊の存在に気付いた彼等は一瞬、色めき立ったのだが……その籠の中には先述の、『by 泉の神様』、てなお手紙が入っていたものだから。
「………………嘘……」
一一と。
『ニ親』に覗き込まれた途端、つぶらなお目々を、ぱっっっちりと見開いた赤ん坊達を見遣って、セッツァーとエドガーは、顔色を蒼白に変えた。
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