授かり物


08/22/2002 ぶきみぃ………………(記載・マッシュ)
XXXX年 XX月 XX日

何が何だか、俺には説明されても、さーーーっぱり、な理由で、どうやら、兄貴とセッツァーの間に、赤ん坊が出来たらしい。
それも、御丁寧に、二人。
しかーも、男女セットで。
泉の神様の前で冗談で云ったことが本当になって云々って経緯は、俺も聴いたけど。
頭から信じろって云われたって、信じられないよ、そんな馬鹿げた話。
だから、何が何だか、俺には判らない理由でってことになっちゃうんだけど。
でも、現実問題、兄貴に良く似た女の赤ん坊と、セッツァーに良く似た男の赤ん坊がいるから、認めなくっちゃいけないのかなあ……。
じいやと、それにばあやは、兄貴の子供ぉぉぉっ! って、日々浮かれまくって、赤ん坊達、構うのに忙しそうだし。
兄貴も、満更じゃないみたいだし。
セッツァーはセッツァーで、すっっっっっっっごいシブーーーーーーーい顔しながらも、子供達のこと、つっついてるから、ま、いいか。
この騒ぎでなし崩しに、セッツァーの奴、城に住むことにもなったから、兄貴は幸せそうだし一一本当はなし崩しじゃなくって、じいや&ばあやの猛烈勇猛果敢アタック、別名を、『家の陛下に手出した挙げ句、子供までこさえた癖に、責任も取らないのか、おんどれは』って云う『説得』と、あーりゃ、誰も逆らえないよな、って云う、兄貴の強烈な『微笑みおねだり攻撃』の所為なんだけど、怖いから、そんなこと、大声で言えない一一、皆がそれでいいってなら、俺は何も云わない。うん。
甥っ子と姪っ子は、結構可愛いもんだし。

……でも。それにしても、不気味だ……。
どうやら、兄貴が母親ってことになってるらしいんだけど、その『母親』はあれでも国王だから。
執務だ議会だ外交だ云々で、今まで通りの、忙しい身だからね。
必然的に、こんなぐにゃぐにゃな生き物になんて、触りたくもないっ! って顔のセッツァーが、子供達にミルクやって、おしめ変えて、ぐずったら、だっこしてあやしてるんだけど。
……もう、兎に角、すっっっっごい、不気味。その姿が。
出来れば一生涯見たくなかった、と思う程、あの姿のセッツァーは怖い。
死ぬ程、似合ってないし。
あ、でも。
ぎゃんぎゃん泣く子供達に手を焼いて、ひょいってセッツァーが『担ぎ上げる』度、じいややばあやに、抱き癖が付くっ! とか、その泣き方はぐずってるんじゃなくって、お腹が空いた泣き方っ! とか云われて、そりゃあ『懇切』に、育児の『指導』されてる姿は、見てて一寸…いや結構、愉快。
育児に関しての知識なんて、セッツァー、皆無だもんね。
楽しいなあ、あいつがいびられてる姿ってっっ。

……………そうそう、処で。
一つだけ、物凄く、不思議なことがある……。
何か……あの子供達……何か……やけに……一一一一。

08/23/2002 は……反比例……(記載・エドガー)
XXXX年 XX月 XX日

毎日毎日忙しくって、夜になるまで構ってあげられなくって御免っっ……なんて。
今夜も部屋に戻るなり、エアネスとセーラの元へ、まっしぐらに向かったら。
……セッツァーが、拗ねた…………。
もう直ぐ三十になろうって年齢の癖に。
我が子と張り合って、どうしようって云うんだろう?
大体、彼が拗ねてみたって、決して可愛い、とは言えないのに。
そもそも彼は、『父親』なのだから。
拗ねるなんて、お門違いもいいトコだ。
……まあねえ……気持ちは、判らなくはないけどもね。
私が子供達を構ってやれない所為で、本来ならば、私が負担すべき部分の育児まで、じいやとばあやに、彼が仕込まれてるみたいだから。
その点に関しては同情もするし、申し訳ないな、とも思うし。
寝不足そー…な顔を見れば、御免、とも云いたくなるし、疲れてるんだなあ…労ってあげようかなって気にもなるんだから。
何も拗ねることはないんじゃないのか?
どんな公務があろうとも、彼と子供達の為に、毎日同じ時間に部屋に戻って、一家団欒っっ…ってものは持てるよう、私だって努力してるんだから。
何が気に入らないって云うんだろう。
……あー、はいはい。
疲労困憊だって云いたいんだね、君は。
だけど……あの子達がここにやって来て、未だ一ケ月前後しか経ってないけど……、何やら、随分と手の掛からない子達だって、じいやとばあやに、聴いたんだけどな。
私やマッシュが赤ん坊だった頃よりも、遥かに手が掛からないって。
一一判った。判ったからっ。
慣れないことしてるんだものね、疲れるんだね。
判ったから、だからそこで、ぐちぐち云わないっっ、鬱陶しいっ。
本当に、君にばかり負担を押し付けているみたいで、私だって心苦しいんだ。
だからせめて夜は、子供達と君の傍で……って……。
え? 順番が逆だ? 君と子供達、だろうって?
……どっちだっていいだろう。君の元にいるのは、変わらないんだから。
本当に、もう……。子供よりも手の掛かる……。
一一そんなに疲れた疲れた云うんなら、もう、休もうか、今日は。
その方がいいだろう? 明かり、落とすよ?
………………って、セッツァー?
君…疲れてるんじゃなかったかい?
確か、目の下に、クマもあったような……。
「だから励むんだ」……って、君、ね…。
普通、そこまで疲れてる人間は、『励もう』なんて考え、起こさな……一一。
………ひょっとして、私の認識って、甘かった?
君の、疲れの度合いと、そういう類いの欲求って、反比例なのか……?
う、うわ、ちょ……一寸待て、セッツァーっ!
未だ子供達、寝てないってばっ!!

08/24/2002 それが男の生理と云うもの(記載・セッツァー)
XXXX年 XX月 XX日

疲れていようがいまいが、その手の欲求の有無には余り関係がない、と云うことが、エドガーの奴にはイマイチ理解出来てないらしい。
エアネスとセーラが未だ寝てない、とも叫んでた気がするが、子供が起きていようがいまいが、関係ないだろう? と思うのは、俺の間違いか?
大人が何をやってるか、なんて、猿に毛が生えたよーな二人に、理解出来る訳もねえだろうが。
……そういう問題じゃない?
じゃあ、どう云う問題なんだ?
仕方ねえだろうが。
それが、男の生理ってもんだ。お前だって男なんだから、察しろ、それくらい。
俺は機嫌が悪いんだよ。
言葉にもしたくない、育児、とやらで、ここんトコ、そりゃあ機嫌が悪いんだ。疲れてるしな。
お前んトコのじい様とばあ様は、ありゃ、鬼の化身か? と云いたくなる程、俺をいびるのがお好きなようだし。……っとに…。修羅の家、じゃねえんだから。
ちったあ、可哀想な入り婿である俺を労れ。立場上は、お前が妻だろうが。

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処でな、エドガー。
……ベッドの隅で、くたばってんじゃねえよ。話を聞けよ。
『手加減』はしてやったろうが。
…あ? ……充分、手加減だろうが。それとも、『昇天するまで』、てなのがお望みだったか?
あー……だから。お前の文句なんざどうでもいいから。話を聞けってんだよ。
…あのな。
じい様とばあ様が、しぬっっっっっっっ程うるさいんでな。ガキ共が寝てる隙に、この間、育児書ってのか? それに、目を通してみたんだが。
……どうにも、な。
その本に書かれてることと、家のガキ共を比べると……どうにも、『変』、なんだが。
お前、どう思う?

08/25/2002 まあ……ほら。生まれが、謎だから(記載・ティナ)
XXXX年 XX月 XX日

それはそれはおめでたい……って云っていいのよね……うん。
一一とってもおめでたい、泉の神様よりの授かり物って云う形で、セッツァーとエドガーに一一深い意味は正直、あんまり考えたくないけど一一赤ん坊が出来たって、マッシュに教えて貰ったから。
フィガロまで、お祝にやって来たのは、良かったんだけど……。
その……ね。
二人の子供達って。
確か、マッシュからの手紙には、一ヶ月程前に、クエクエ云う『赤チョコボ』が銜えた籠の中に入ってやって来た…って書かれていて……生後ンヶ月、くらいの、ハイハイもしない本当の赤ん坊だ…って、私、聴いてたんだけど……。
幾ら、モブリスとフィガロが遠く離れていて、知らせを受けてからお祝に駆け付けるまで、数日間が空いてしまったって云ってもね?
たった、十日かそこいらで、生後ンヶ月の赤ん坊が、どう見ても三才児、って云うくらいまで、劇的な成長を遂げるものかしら……?
それとも……両親譲りの金と銀の髪が、胸よりも下に伸びても、ちゃあんと人語を喋っても、とてとて、自分の足で、お城の中駆けずりまわっても、赤ん坊…って云うんだったかしら。
一寸、変……よねえ、それって。どう考えても。
一一一一まあ、ね。あの双児ちゃん達は、生まれがあんなだし、はっきり云っちゃえば正体不明だし、謎だし。
何が起こっても、それが普通なんだわ、うん。
…………うん。
いいのよ。何が起こっても、何がどうなっても、見なかったことにすればいいのよ。
そうよねっ。私は、何も見てないわっっ。何も気付いてないわっっ。
そんなことどーでもいいくらい、あの子達、可愛いし。
男の子の方……確か、エアネスって云ったわよね。
あの子、もー、それはセッツァーにそっくりで。彼の小さい時って絶対、こんな顔だったんだわっっ、て思える程で。見た目『だけは』、将来、絶対いい男になるわー。
女の子の方、セーラちゃん。あの子はあの子で、エドガーに良く似てるし。エドガー女の子にしたら、ぜっっっっっっったい、こうなるっっ! って力説したくなっちゃう風だしっ。
あー、もー、着替え人形扱いしてみたい、二人共っっ。
唯ねえ、じいやさんとばあやさんが、エアネスの銀髪、金髪に染めるって企んでるのは、どうかなって私、思うけど。
そりゃあね、髪の毛金色に染めちゃえば、瞳は蒼だから、フィガロの跡継ぎには最適な外見になるんだろうけどねえ……。

……でも、無理よね、きっと。
じいやさんとばあやさんの、『エアネスの髪を金色にしてしまおう大作戦』も、私とセリスで騒いでる、『二人を着替え人形にして遊んじゃおう計画』も、多分、叶わぬ夢なんだわ。
だって……あの分じゃあの子達、後半月もしたら、五才児くらいに成長してそうだもの。
……『パパ』と『ママ』、たーいへん、だわねえ……。
同情しちゃう。

08/26/2002 誰に似た?(記載・『御両親』)
XXXX年 XX月 XX日

…ああもう……判ったから…。
判ったから、もうそんなに泣かないでくれるかい? ほら、もう、私にしがみ付くのは止めて……。
……………だから…。そんなに強くしがみ付かれると、歩けないんだが……。
一一判った。判ったから。ほら? 云って御覧。唯、泣いてないで。誰にどうやって、苛められたの? 何か、云われたのかい?
え? がびのげびっばられで……って?
あああ、髪の毛引っ張られて、叩かれたのかい?
…痛かったんだろうねえ…。可哀想に。でもね、そんなことで何時までも、火がついたように泣いていたって何にもならないと私は思うよ?
そんなことするな、とか云ってみないと……。
は? 怖い? ……怖いって……。
……だから、ね。何かある度、私にしがみ付いていても、何の解決にも……って……あああああ、又、泣く……。
……エアネス…。どうして、セーラに苛められただけで、お前は何時も、そう…………。
……一体、誰に似ちゃったんだろう……。

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…お前、な。セーラ。
そろそろ、いい加減にしねえと、抱え上げてケツ叩くぞ?
……叩かれるような悪いことしてないもんっ……って……してるだろうが、充分。
そんっなに、エアネス苛めて楽しいか? あいつはな、お前と違って、直ぐ泣くんだぞ? 男とは思えねえ程……。
大体、お前は何で何時も、エアネスに突っかかるんだ?
……………………。
は? エアネスが、ママの処にばっか行くからだって?
…なら、お前もママんトコに行きゃあいいだろう? あいつが、お前とエアネスと、分け隔てをしたことがあるか? ……って、そうじゃない? じゃあ、何だ?
……………ふ…ふーーん。そ、そうか……。
エアネスは、ママのじゃなくって、自分のだ、ってか……………。
そもそも、あいつはモノじゃねえんだが……。
お前、複雑な性格してんな……。
誰に似ちまったんだかな……。


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