「ぎゃはははははははは!!!馬鹿過ぎるっ!」
 その様に、一部始終を見守っていた周囲から、爆笑が沸き起こった。
 何がそんなに面白いんだと、二人の眉間に青筋が出来掛けたが、余りの衝撃の度合いに、何時までも彼等は、動けずにいた。
「……エドガー…。聞いてもいいか?」
「……何を…」
 動けずにいる癖に、目前のエドガーに向かって、セッツァーが口を開いた。
「ミーメって、誰だ?」
「……私も、聞いていいかな?」
「…何だよ…」
 一体何故なのかは、ご当人にしか判らないが。
 至極、不機嫌そうな顔で、ギャンブラーは陛下が呼んだ名前の正体を、問いただす。
「君は、ダリルとそう云う関係だったのか?」
 やはり、ギャンブラーと同じ位、苦虫を噛み潰した表情で、陛下も、似た様な質問を口にした。
 むっとしたまま、睨み合う事、暫し。
 なあんでかは知らないが、それぞれが夢に見た女性の事で、二人は喧嘩になりそうな雰囲気に突入した。
 ……別に、幾ら喧嘩をしてくれても構いはしないが、いい加減、情事が始まりそうな恰好で、男二人、微動だにしないのは止めた方がいいのでは…と、当方は思うが。
「まあまあまあ。それくらにしておきなさいよ」
「そうよ、みっともない」
 やはり、そんな構図を見守る周囲も、苦痛だったのであろう。
 セリスとティナが、動こうとしない二人を引き剥がしに掛かった。
 ずぅるずぅるとひっぺがされて、漸く、二人の距離は遠のく。
「………一度、とっくりと、話し合う必要がありそうだな…」
「それは、私の台詞だ。君に言われなくないなあ…」
 遠のいても、喧嘩が終わる事は無かった。
 その内に。
 すっとエドガーが立ち上がって、くるりと踵を返すと、スタスタ、キャビンへと降りて行ってしまった。
 喧嘩の続きをするつもりなのだろうか。
 セッツァーも、えらい事不機嫌な様子のまま、その後を追って。
 二人の姿は、ロビーから消えた。



 消えゆく、二人の姿を目で追って。
「ああ云うのを、犬も食わないって云うのよねえ…」
「って云うかね。ティナ。未だ……………とでも、思ってるのかしらね?あの二人」
 例の、ニタッとした、意味不明な笑みを浮かべて、ティナとセリスが囁き合った。
 不思議そーな顔をして、残りの男共は女性の会話に首を傾げる。
「…なあ、犬も食わないってのは…。夫婦喧嘩の例えだよな…。ティナ、未だ、記憶が完全に戻ってないのかな?」
「え?犬も食わないってのは、そう云う事なのか?ロック」
「知らないでござるか?マッシュ殿。正確には、夫婦喧嘩は犬も食わない、と云うでござるよ」
「じゃあ、…『未だ……………とでも…』って、セリスの言葉の聞き取れなかった部分は、何だったんだ?カイエン」
「その様な事、拙者に判ろう筈が…」
「ロックには?」
「んな事、俺に判る訳がないだろ?」
 ……………。
 ティナとセリスの意味不明の会話。エドガーとセッツァーが不機嫌になった理由。
 全くと言っていい程、想像が付かずに、ロックとマッシュとカイエンの三人は、腕を組み、悩み始めた────。




 さてさて。
 今回の、ファルコン号での昼下がりの一コマは。
 実はこれで、終わりである。
 聡明な聞き手でいらっしゃる貴方には。
 二人の女性の会話の意味と、二人の男性の不機嫌の理由が、お判りになるだろう。
 怒りに打ち震えながらキャビンに降りて行った、国王陛下とギャンブラーのその後の『喧嘩』は、貴殿のご想像にお任せしたい。
 蛇足ながら。
 その場に居合わせたにも拘らず、陛下とギャンブラーが機嫌を損ねた理由と、女人達のほくそ笑みの意味に、男達が、この冒険活劇が幕を下ろした後も、気付く事は無かった事は、語り添えておこう。

 

 

thank you by Kaina Umino
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  …と云う訳で。これが本当に『オチ無し ヤマ無し 意味無し』…と云う意味での、やおいですね…(汗)。
 なあんで、こんなの、書いてしまったんでしょうか…。海野は……。
 皆様のお目汚しをしてしまった…。
 (尚、このお二人の喧嘩の続きを覗いてみたい、と思われた方は、こちらへどうぞ)

 

 

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