21XX年上半期に実施された、フィガロ及びサウスフィガロ連合王国並びにドマ国、両三軍合同演習後、……州フィガロ空軍基地内にて行われた、Marshall of the Royal Air Force以下、Air chief marshalクラス軍議内にて提出されし、軍事機密漏洩容疑に関する追跡調査の資料。
通信傍受記録より
検閲No.024576
記録時間 X月X日 pm11:26
発信者 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
発信地 ……州フィガロ空軍基地内
受信者 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
受信地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
通信形態 Cellular phone
通信時間 二分五十七秒
傍受内容
「エドガー? 俺だ」
『…セッツァー? 君、演習の準備で忙しいんじゃ……。それに、電話はまずいんだろう?』
「まあな。忙しい事は忙しいな。目が回る程。……少しだけ手が空いたから、抜けて来た。携帯だから、平気だろうし。……悪いな、こんな時間に。お前の方も、忙しいだろう?」
『私は、平気だけれど。……それよりも、元気かい? ……十日振り……なのかな? 君の声を聞けたのは』
「ああ。もう、十日だ。……厄介な、長い演習だ……。又、後十日もすれば、今度はドマだから。本当に電話も出来なくなる。だからその前に一度、電話しておきたくて…な……」
『空軍一の問題児で、目を付けらてる癖に。後で又、上官に小言を云われても、知らないよ、私は。……でも、有り難う、電話して来てくれて。私も少し、寂しかったんだ』
「……悪いな。これも、仕事だ。仕方ない。ドマに行く前に、時間が出来たら、もう一度くらい、電話してもいいか?」
『君が、叱られないのならね。……セッツァー? …その……規則違反、なんだろうけど……メールくらい…だったら、私からしても構わない……かい? 一回くらいだったら……』
「夜中なら、大丈夫だと思う。……多分。────悪い、呼ばれた。切るぞ。又、な。お休み。愛してる」
『ああ。お休み。……愛してるよ』
検閲No.033486
記録時間 X月X日 am02:16
発信者 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
発信地 フィガロシティ 1-1-1 フィガロ城内
受信者 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
受信地 ……州フィガロ空軍基地内
通信形態 Cellular phone mail
通信時間
傍受内容
Edgar
×/× 02:16
そろそろ
予定通りなら、明後日、君はドマに向かうんだったね。
体に気を付けて、無事に戻って来てくれ。君が、怪我とか、事故とか……遇う事の無い様に、祈ってるから。
これから先、90日近くも君に会えないなんて、初めての経験だから、寂しい、けど。
……兎に角、君が無事に帰って来るのを、私は待ってるから。
それじゃ、又。
お休みorおはよう。愛してるよ。
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E.F
検閲No.041532
記録時間 X月X日 am03:09
発信者 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
発信地 ……州フィガロ空軍基地内
受信者 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
受信地 フィガロシティ 1-1-1 フィガロ城内
通信形態 Cellular phone
通信時間 三分二十八秒
傍受内容
『……もしもし……?』
「……寝てた…か?」
『ん……。一寸、ね。さすがにこの時間は…。御免…』
「お前が謝る事じゃないだろうに。悪かったな、深夜だってのに」
『いや。平気だ。…もう、平気……。──どうかした? こんな時間に』
「後、数時間もしたら、ドマに向かうから。最後に、電話しとこうと思ったんだが……こんな時間になっちまった」
『もう行くのか…。ドマに。時間の事は、気にしなくてもいい。それよりも、君は? こんな時間まで起きていて、電話なんかしてきて、大丈夫なのかい? 明日に、差し障りがあるんじゃ?』
「平気だろ、一晩の事だ。移動日だしな。……皆、変わり無いか? お前は? あんまり無理すんなよ。去年のこの時期、夏バテして体調崩したろう? 今年は……一緒にいてやれないから……」
『……有り難う。平気だよ。元気にしてる。マッシュ達も元気だし。君も、体には気を付けて。今回の演習は、異例な程長いらしいから……』
「…あ…ああ…。まあ、一寸、な……。色々、あって」
『色々?』
「大したこっちゃない。気にするな。──じゃあ……な。悪かった、起こして。手紙くらいなら、書けるかも知れないから。又、連絡する。あ……手紙、な。幾ら何でも、とは思うが……もしかしたらそっちも、『覗かれる』かも知れないから。マンションの方に送る。だから、愛してるとは書けないが、気にするな」
『ああ。判った。返事は…書けるのかな…。まあ…マッシュにでも、さり気なく聞いてみるよ。……じゃあ、セッツァー……お休み。又。愛してる』
「俺もだ。愛してる。エドガー。お休み」
検閲No.049875
記録時間 X月X日
差出 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
発送地 ドマ国……州──一空軍基地内
受取 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
受送地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
通信形態 Analog(Letter)
通信時間
検閲内容
元気か? もう、こっちに着いて半月になる。やっと、手紙を書く時間が取れた。
こっちは、変わり無い。お前も知ってる、俺のパイロット仲間達、あいつらも、元気にやってる。周りだけは、何時も通りだ。
マッシュ達は、元気か? まあ…元気か。あいつらの事だからな。シャドウの奴…何か、気になる事、云ってきていないか?
演習の方も順調で。特に問題なくやってるから、心配するな。
予定通り、フィガロに戻るのは、再来月の頭になる。
又、その頃に逢おう。
じゃあな。
S.G
検閲No.051679
記録時間 X月X日
差出 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
発送地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
受取 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
受送地 ドマ国……州──一空軍基地内
通信形態 Analog(Letter)
通信時間
検閲内容
Dear Setzer
先日は、手紙を有り難う。返事が遅れてしまって、申し訳ない。
色々と忙しくて。
……相変わらず、君の書く手紙と云うのは、素っ気無いと云うか、何と云うか……。まあ、良いのだけれども。
元気かい? ドマの様子は、どう? 君の同僚達も、元気そうだね。
こちらは皆、元気だよ。私も含めて。
シャドウから聞く話の中にも、特に、煩わしいそれはない。
そう云えば、君がこの演習に参加する事が決まってから、ずっと、聞こう聞こうと思っていて、機会を逸したままだったのだけれど。
君、今年の夏の休暇はどうするんだい?
もしも都合が合うのなら、又、何処かで一緒に、休暇でも。
では、又。
無事の帰国を、祈っているよ。
E.F
検閲No.061743
記録時間 X月X日
差出 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
発送地 ドマ国……州──一空軍基地内
受取 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
受送地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
通信形態 Analog(Letter)
通信時間
検閲内容
元気にしてるか?
もう、演習も、半ばを過ぎて、もう少ししたら、全てが終わる。
もう少し……もう少しすれば、フィガロに帰れる。
俺は最初から、望んでこの仕事をしてるのだし。別に、任務が辛い訳じゃないが。その……判る、だろう?
そっちに戻れば、暫くは休暇になる。
又、飯でも一緒に、喰いに行かないか。
楽しみにしてるから。
じゃあ、又。再来週に。
官舎の方には、X/Xの、夕方には戻る。
S.G
検閲No.066829
記録時間 X月X日
差出 エドガー・ロニ・フィガロ二世
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
発送地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
受取 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
受送地 ドマ国……州──一空軍基地内
通信形態 Analog(Letter)
通信時間
検閲内容
Dear Setzer
手紙を有り難う。
元気そうで何よりだ。
君から便りを貰って、直ぐにこの返事を書いているのだけれど、間に合うだろうか。
行き違いにならなければ良いけれど。
X/Xの、夕方なんだね? 君が戻って来るのは。
だったら、それに合わせて、私も官舎の方に出向いても構わないかな。
都合が合うようなら、そのまま、食事でもどうかと思って。
九月に入って暫く経つと云うのに、フィガロは相変わらず、暑い。冷房の効いている部屋から、出られなくなりそうで……。又、去年みたいに、体調を崩す事はないと思うけれど、気をつけるようにするよ。
君が戻って来た時に、私が寝込んでしまっていたら、又、会えなくなってしまうからね。
それじゃあ、セッツァー、又。
無事の帰国を、心待ちにしているよ。
X/Xの、夜に逢おう。
E.F
検閲No.076248
記録時間 X月X日 pm10:11
対象者 1 エドガー・ロニ・フィガロ二世、
職業 フィガロ及びサウスフィガロ連合王国 現・国家元首
対象者 2 セッツァー・ギャビアーニ
所属 フィガロ・ロイヤルエアフォース 第15航空軍
階級 Flight lieutenant
聴取地 フィガロシティ ──街……ストリート XXX-XX-XX
傍受理由 21XX年上半期に実施された、フィガロ及びサウスフィガロ連合王国並びにドマ国、両三軍合同演習に於ける、通信傍受記録よりピックアップされた、軍務規則第XX-X-X違反に当たる、Cellular phoneを利用した通信事実によって浮上した、上記両名の、軍事機密漏洩容疑に関する追跡調査に基づくもの。 以下、傍受内容
「……どうだった? 演習」
「別に。長かっただけで……、今までの演習と、これと云って差があった訳でもねえしな」
「そう。……まあ、余り私には興味のない、どうでも良い話だ。君が無事に帰って来てくれたから、それだけで、満足。軍の事は正直……良く判らないし。私の耳には入って来ない事柄だしね」
「ま、そうだろうな。お前の耳には入らねえだろうし。入って欲しくもねえし。伏魔殿に良く似た所だ、あそこの上層部は」
「私の耳に、入って欲しくない事?」
「……あ、いや……。何でもない」
「…………成程」
「ん? 成程って……何だ?」
「今回の、異例に長かった演習。君が言い淀む様な内容だったんだなって思っただけ」
「……エドガー。聞かなかった……じゃねえな、思い当たらなかった事にしとけよ。そいつは」
「判ってる。私だって。聞かなかった……いいや、今夜、君とこうして、こんな話をした事すら、私の記憶には残らないよ。大丈夫」
「そう、だな……。──厄介、だ。俺達の、互いの立場って奴は……」
「私達の関係、は? 厄介じゃないのかい?」
「俺とお前の関係? こうしてる、俺達の関係か? 世間には言えない、恋人同士って奴か? ……お前との事を、そんな風に思ったりする訳がないだろう?」
「ふふ……。知ってるよ。云われなくとも。私だって、そんな風に思ったりなんてしない。君との事なのだから。…………愛してるよ、セッツァー」
「…ああ。愛してる、エドガー。お前が、王だろうと。王でなかろうと。愛してる。お前だけを。お前、だから」
「私もだ。君だから。…………っ……セッ…セッツァーっっ!」
「何だよ」
「君……未だっ……──」
「未だ? 何だ? 足りないっつってんだろうが。三ヶ月半も禁欲したこっちの身になってみろ」
「それは、私だって条件はっっ……。…あ……。…明日……折角の休日…なのに……。起きられ……なく……な……──」
「……いいだろう? 別に。一日中、こうしていれば……──」