俺達が。
 ガストラの野郎のブラフに、まんまと乗せられたんだ、ということに気付いて。
 ベクタを後にし、世界の南の孤島にある、サマサの村へと辿り着いた時。
 ティナと、ロックと、セリスと、初見のじー様と生意気そうなガキに、レオ将軍が、ケフカに殺された、という話を聞かされた瞬間、俺が視線を走らせた先は、フィガロ国王であるあいつ、エドガーの横顔だった。
 唯、何となく気に入らない、と感じた場面を見せつけてくれたあいつを、それ程までに俺は気にしていたのか、というのが、自分自身にもかなり意外だったが、それでも、俺があいつの横顔を見たのは事実で。
 そうなんだ……とか何とか。
 どうでもいいことのように、取り繕った言葉、取り繕った表情で、『仲間達』へと笑みを向け、レオ将軍の死を、それ程悼んでもいない風に振る舞うあいつを、ひたすらに見つめていた。
 ────遠い……遠い昔。
 俺には、ダリル、という、唯一の『朋』がいた。
 ファルコン、という、世界にたった二つしかない『翼』の片割れを持っていたダリルは、俺の人生の中に、唯一立ち入って来られる存在だったから。
 ……だからダリルは、俺の朋としてあり、俺はダリルの、朋としてあり……。
 もう、いなくなってしまったダリル以外、俺の人生に立ち入ることの出来る奴などいはしない筈で、いなくなってしまったダリル以外、俺は誰も、俺の人生の中には入れぬ筈で。
 故に俺は、俺の中に誰も入れぬように、他人の中にも入らぬつもりだったのに……セッツァー・ギャビアーニ、お前は一体、何を考えている? と、自分自身に問い掛けたくなる程、取り繕うエドガーの横顔から、『何か』を汲み取ろうとし。
 言い訳を付けて、俺達の傍を離れ、レオの眠る場所へと向かったあいつの後を追った。
 そうして、真新しい墓石ぼせきの前に額ぬかずいて、今にも涙を零したそうな、紺碧の瞳を、そっと瞼で被ったあいつに、どうしようもない苛立ちを覚えた。


 ベクタで過ごした、あの夜の、あの会食会の席で。
 もしかしたら、この二人は……と。
 そう考えた俺の『疑い』は、間違いでないと、俺は悟った。
 そうしたら、無性に、全てが気に入らなくなった。
 レオ、という男が、その存在が、エドガーの支えであっただろうこと。
 『そんな支え』を持たなければ、今日まで生きても来られなかった、エドガーという男の『脆弱』な部分が、どうしようもなく、許せなかった。
 理解も出来なかったし、理解したくもなかった。
 ………………いいや。
 もしかしたら、俺は。
 掴んでいた何かを失った時の痛み、それを知っているから。
 ダリルを失ったあの『黄昏れ』を思い出し。
 エドガーの姿に、あの時の自分を重ね。
 重なった、その姿……いや、幻影が。
 どうしようもなく、許せなかったのかも知れない。
 レオと己との間に一体何が横たわっていたのか。
 それが、如何なる物だったのか。
 泣き濡れる代わりに、語ってしまいたい、と言うように、徒然に喋り出したあいつの話に耳を傾けながら。
 お前の言うその関係は、決して、『友人』では有り得ないだろう……? と内心でも、実際にも、吐き捨て。
 『何か』がなけりゃ、生きてもいけない大馬鹿者だと、侮蔑し。
 …………でも、『何か』がなければ生きて行けない、そう言うなら、その『何か』を拵えてやるよ……と、死んじまったばかりの男の墓前に、あいつを押し倒し、犯してやりながら。
 俺は、あいつに与えた全てを、ダリルを失った頃の自分自身の幻影へと、投げ付けていたのかも知れない。

 

 

 

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