どうして。
 どうして俺は、あいつを抱き続けたんだろう。
 あいつに言ってやったように、俺は別に、あいつの躰に興味があって、あいつを犯した訳じゃないのに。
 ──下らない茶番に付き合うだけだったら、仲間達の前でだけ、『甘い』振りをしていれば済んだ。
 そこから先の行為にまで、踏み込む必要なんてなかった。
 恋人同士の真似事なんて、俺達には最初から最後まで、何処にも、何一つ、必要なんてなかった。
 なのにどうして。
 どうして俺は、あいつを抱き続けたんだろう。
 もう、判らない。
 俺には何も、判らなくなった。
 俺は一体、どうしたかったのか。
 俺の『苛立ち』の根源が、何処にあったのか。
 俺は本当は、あいつの何が、何処が、最も『気に入らなかった』のか。
 ……俺にはもう、判らない。


 俺は、俺の理屈に従って、理不尽に、あいつに『何か』を投げ付けようとしたけれど。
 俺は、もしかしたら。
 あいつに何かを、求めていたのかも知れない。
 俺が、『何か』を投げ付けるのではなくて。
 俺に、『何か』を投げ付けて欲しかったのかも知れない。
 俺はあいつに…………『何か』、を、求めていただけなのかも知れない。
 それが何なのか……その、『何か』は何だったのか……それすら、俺には判らないけれど。


 俺はどうして。
 どうして、あいつを抱き続けたんだろう。
 どうして、踏み込み続けたんだろう。


 俺は一体。
 あいつに、何を求めようとしていたんだろう。

 

 

 

FF6SS    Nextpage    pageback    top