ふわりと、柳生を中心にした周囲の空間に、浮揚感が生まれた。
途端、一帯は掻き曇ったかのように暗くなり、厳つ霊
ガン! と、光──京一の氣を、そのような形で具現化させた物は、柳生目掛けて襲い掛かった。
光は一度散り、再び掻き集まると、凄まじい音と共に柳生に絡み付き、人々に浮揚感を与えた大気は、明らか過ぎる重力となって、大地毎、彼を押し潰した。
「龍麻! 壬生っ!」
──光が褪せ、重力が軽減されても、柳生はその場に立ち続けていた。
が、京一自身、それは見越していたことのようで、直ぐさま彼は飛び退き、龍麻と壬生の名を叫ぶ。
「陰たるは、空昇る龍の爪」
「陽たるは、星閃く龍の牙」
「表裏の龍の技、見せてあげましょう」
「秘奥義、双龍螺旋脚!!」
すれば、判っていたとばかりに、後ろに控えていた龍麻と壬生が、呼吸を合わせ、方陣技を放ち。
「……どうだ……?」
「未だだよ!」
効いたか? と刹那、敵の様子を仲間達は窺ったが、龍麻は、石畳を踏み直して、前のめり気味に、柳生の懐へと突っ込んだ。
繰り出す拳、脚技、その全ては的確に、相手の急所を捉えてはいたが、全て、柳生の操る刀に防がれ、手傷を負わせるには至らなかった。
「ひーちゃん、退いてっ!」
「小蒔様! 龍麻様!」
その様をジリジリと見遣っていた小蒔と雛乃は、龍麻の技を防ぐべく振るった太刀を引く瞬間、柳生に瞬き程の隙が生まれることに気付き、矢を番えた。
「……っ、させるかっ!」
遠目から、少女達が矢を放とうとしているのを見て取り、龍麻へ浴びせようとしていた技の矛先を、少女達へと柳生は変える。
「二人共、そのまま射ろ!」
「大丈夫だ、俺達が防ぐっ」
ボッと音を立てて、柳生の剣先より生まれた氣塊に、刹那、小蒔と雛乃は弓引く腕を留めそうになったが、醍醐と紫暮が、その身を盾に二人を庇った。
「五月雨撃ち!」
「火龍!」
自らを呈して盾となってくれた少年達の背より、雛乃は矢の雨を降らせ、小蒔は火の矢を射る。
「その程度で!」
向かって来た数多の矢を、柳生は悉く払い落としてみせたが、少女達が射った矢の役目は、目晦ましで。
「北の将、黒帝水龍印!」
「南の将、赤帝火龍符!」
「今ひと度、相克の理を違え、我が忠義の下、相応となさん!」
「紫龍黎光方陣!!」
目晦ましの矢達の影から飛び出した、如月、村雨、壬生の三人が、方陣を敷いた。
「時には、薔薇の棘の如く」
「時には、百合の蜜の如く」
「時には、芙蓉の花の如く。今こそ、乙女の力集め示す時!」
「妖華三方陣!!!!」
更にその背後より、亜里沙、舞子、芙蓉が方陣を重ね。
「吹けよ、風!」
「呼べよ、嵐!」
「来れ雷! 青白き閃光となって、駆け巡れ!」
「演舞、春雷の舞!!」
雨紋と雪乃が、雷鳴の玉を宙より生み落とし。
「力よ!」
「ワン・ツー・スリーっ」
方陣を敷くや否や、バッと飛び退った仲間達を護る為、紗夜とさやかが、守護の力を生んだ。
「小賢しいっ!」
……けれど、それでも、柳生が地に膝付くことはなく。
「さやかちゃん! 比良坂さん、危ない! ──覇王斬!」
彼が薙いだ剣圧より、霧島が少女達を救った。
「っっ! アラン、劉、加われ!」
「What?」
「……何や、紅井はん?」
「いいから、行くぞ! ──大宇宙の名の下に!」
「……ああ、それかいな。──宇宙の平和、護る為!」
「愛と──」
「勇気と──」
「friendship!」
「五つの心を一つに合わせっ」
「今こそ放て、絶対無敵の必殺技!!」
「ビッグバンアタックインターナショナルーーーーーっ!!!!」
霧島に護られつつ、さやかと紗夜がその場を離脱すれば、真打ち登場とばかりに、アランと劉を巻き添えにしながら、コスモレンジャー達は最終必殺技をぶちかまして。
「……うーん、何時の間に、アランと劉は、コスモレンジャーの一員になったんだろう」
「何時の間にか、だろ。雨紋と諸羽も、引き摺り込まれたらしいぞ」
「あはは、似合う、似合う」
ビッグバンアタックインターナショナルで、柳生が倒れてくれたら、それはとても素敵なんだけどなー、と呟きながら龍麻は、軽口を叩きつつ、ちろりと京一を見遣った。
「…………何とか決着付けるか。……いい加減、誰も彼も、限界だろうしな」
「……そうだね。一か八かでも、そろそろ。──京一、後ろ任せたから!」
「は? おい、ひーちゃん? ……一寸待て、龍麻っ!」
────皆が皆、限界を訴えてもおかしくない筈だ、と言う、横目で見遣った相棒へ、小さく龍麻は告げ。
京一が止めるのも聞かず、自分達より距離を取るべく石段の方へ退いた柳生へと、一人駆け出す。
「……この、ド阿呆っ!! ──美里っっ!!」
「えっ? 京一く……──。──龍麻君っ!! ……体持たぬ精霊の燃える盾よ、私達に守護をっ!」
その背へと、京一は強く怒鳴り様、葵を振り返り、彼に名を呼ばれた意図を汲んだ葵は、青褪めながら、駆けて行く龍麻を精霊の盾で包み。
「柳生宗崇っっ!!」
「唯一人、俺に挑むか、緋勇龍麻!」
後を追い、駆け出した京一の目の前で、龍麻と柳生の技同士がぶつかり合って、強い閃光を生んだ。