声を洩らして、指の所為で飲み込むことも出来ない透明な雫も滴らせて、理性の光を何処かに落としてしまったような眼差しになった龍麻は、何時しか自ら、京一の指先に舌を這わせ始めた。

「あ……。あああ…………。あ…………」

何をされるのか、充分過ぎる程判っていながら、懸命に指へと舌を絡めて、だと言うのに京一は、唇を優しく背に寄せたまま、最奥の入口近くを時折撫でるしかしてくれず、透明な、光る雫さえ溢れさせ始めた、擡げ切ったモノには決して触れてはくれなくて、喘いでいるような、泣いているような、みっともない……、としか自身には聞こえぬ嬌声だけを、彼は上げ続けた。

「龍麻…………」

愛撫はもどかしくて、己が声は情けなくて、泣き出したくなって来た彼の耳許で、耳朶に微かに歯を立てつつ、京一は、惨過ぎる程甘い声で名を呼び。

「んあ……っ」

滴る程に濡れた指先を、龍麻の最奥に忍び込ませた。

押し入った、中を掻く風に蠢く指は直ぐに数を増やし、奥へと続く入口を広げながら、慣れたように『一点』を探り当て。

「ああああっ!」

龍麻に、高い声を放たせる。

「……両隣に聞こえんぞ? いいのかよ、俺等が何してるかバレても」

嬌声を、京一は何処かうっとりと揶揄し。

「だ……って……っ。あ……。ああっ……。きょ……いち……っ。何で……触ってもくれな…………っっ。んんっっ……」

「ああ、『こっち』か?」

眦に溜め続けた涙を頬に伝わせながら微かに振り返った龍麻を、微笑みを浮かべつつ見遣って、漸く、そっと、『泣き続ける』彼のモノに手を添えた。

「……あーあ、こんなにしちまって……」

耳許で、子供を叱るトーンで囁き、濡れそぼつモノの先を、京一は少しだけ愛で。

「でも、駄目」

突き放すような声で、突き落すような科白をさらっと吐くと、前だけを寛げた服の中から引き摺り出した、猛る、己が欲を、恋人の最奥への入口へと押し付ける。

「京一……っ。ヤだ……っ」

「聞けない」

く、と迫って来た熱いモノに、龍麻の腰は思わず引けて、けれど、逃げて行くそこを京一は両手で強く引き付け、龍麻の手がドアを滑り、前屈みになった瞬間、一息に貫いた。

「あああああっ!」

充分に解されたとは言え、立ったまま背中から満たされて、彼の躰が強く撓った。

「……龍麻」

「…………きつ……いっ……。きょうい…………っ。離し……っ」

仰け反った躰に、又、剣士の逞しい腕が絡んで、頤までもが指先で捕らえられ、身を攀じることも出来ず、龍麻は悲鳴を上げる。

荒々しい、意地の悪いやり方で与えられる快楽から、何とかでも逃れようと蠢いた彼の躰は、唯、腰だけが揺れて、それは……京一を誘っている以外の何物にもならない蠢きで。

だからなのか、突き上げる勢いは、より性急になって、猛々しくなって。

龍麻の喉を迫り上がる声は、高くなる一方だった。

「あ……、京一……。京一……っっ……」

「お前の中……すっげ気持ちいい……」

『己』を埋めた最奥の入口は、引き攣れながら京一の欲に絡み続けて、けれど、酷く熱かった中は、いっそ包み込むまでに柔らかく欲を含み続けて、京一は、眩暈を覚えた時に洩らすに似た溜息を、龍麻を苛みつつ、幾度となく吐いた。

「んっ……」

「……あっ……」

…………交わりは昂って行くのみで、溜息と嬌声は入り乱れて、京一からも、切羽詰まったような声が洩れ始めた頃、苦し紛れに爪でドアを掻きながら、龍麻は我知らず、『自ら』に指を這わし掛けた。

「…………駄目だって……」

けれども彼の手は、直ぐに京一に見咎められ、掬い上げられ、再びドアへと縫い止められる。

「だって……っ……」

「俺のだけでイけよ……」

「そん……な……こと……っっ」

「俺の、奥まで厭らしく銜え込みながら、滅茶苦茶に乱れて、俺のだけでイっちまうお前が見たい……。なあ……龍麻…………」

「ふぁ……っ……。ん……っ。……あ……、きょうい……ち……っ。京一っ。俺、も……うっっ……」

「……っ……、いいぜ、イけよ。俺もっ……」

「ああっ。あああああ……っっ」

「……龍麻……っっ」

入口と、最奥の一点を抉る欲の蠢きは益々猛々しくなって、激しさを増して、痛む程腰を掴まれ、ひと度ずるりと抜けて行ったモノに、次の刹那には一際深々と貫かれて、龍麻は啼きながら果て、京一も、息を飲みつつ、最奥の奥の奥に欲を迸らせ。

「んんん……っ」

京一の躰と欲が、己の中に熱だけを残して離れた途端、龍麻はガタリと、ぶつかるようにドアに身を預け、小刻みに身を震わせた。

「龍麻」

冷たい三和土に今にも倒れ込みそうな躰を、京一は腕に抱き、名残りのキスを落とす。

「…………京一……っ」

「……ん?」

「何か、変……っ……」

「変? 何が?」

「未だ、躰熱い……。その……ちゃんと……。でも……っ」

「大丈夫だって。俺が付いてるから。──風呂場とベッドで、続き、しような」

己も、快楽を吐き出すことは叶ったのに、何かが何時もと違う、と涙目で見上げて来た龍麻に、もう一度、チュ……と軽い音立ててキスして、彼の足首に絡み付いていた布地達を剥ぎ取り、一糸纏わぬ姿の恋人を横抱きにすると、京一は、浴室へと消えて行った。

愛し合った跡が赤裸々に残る狭いそこに、ふい……っと背を向けて。