57.少年達の願い act.5

大して厚くも無い天幕の外で。

大地の上に、ちょん、と座り、各々の武器を抱えた少年達が。

天幕内より沸き上がった、後悔を迸らせるルカの声を聞きながら、顔を見合わせにっこりと、微笑んでいた。

盟主と英雄に請われ、引き摺られるまま、訳も判らず『盗み聞き』に付き合わされたキバは、天を見上げて何かを堪えていた。

シュウに追い出されたが為、その場に混ざる結果となった、ビクトールとホウアンは、笑んで見せた少年達を見遣り、何か言いたげにしていた。

「ルカ・ブライト? 誰が?」

ビクトールを呼びに来て、たまたま、天幕の中より洩れて来たルカの叫びを聞いてしまったフリックだけが、事情を飲み込めず、何の話だ? と首を傾げていたけれど。

「後で説明してやっから、黙ってろ」

今はそんな事、どうだっていいんだよ、と、青雷を押し退け。

「最初っから、これが目的だったのか?」

少年達を見下ろして、ビクトールが云った。

「……どうだっていいじゃない、そんな事」

だが、まじまじと顔を覗き込まれても、少年は、唯、にこにこと、『頼りなさそう』な笑みを浮かべるだけで。

「これでね、きっともう、大丈夫だよ」

聞いてみたって仕方ないだろう? と、少年を庇う様に、マクドールがちろりと、ビクトールを見上げた。

「そりゃ、まあ……。だがよ……──

──覚えてしまった後悔は、多分一生消えない。後悔する事を覚えたんだ、もう、彼の償いは、始まったんだよ。それで、いいじゃないか。死ぬまで忘れられない後悔は、酷く重たいものだ。彼の場合は特にね。それでも、失いたくないと思ったシュウの時間を止めない為に、彼は生きて行くしかないんだから。充分な、罰の一つさ。──まあ、それでも。何時か、限りある生が、救ってくれるよ」

英雄の言い分に、ビクトールはそれでも、ぶつぶつと物言いたげな風だったが。

続いたマクドールの言葉に、返す術をなくし、押し黙った。

「…………さあ。そろそろ、行こうか」

傭兵が押し黙ったのに満足し、マクドールが立ち上がった。

「そうですね。最後の気懸かりも、何とかなったみたいですしね」

彼に続き、盟主も又。

「僕は、僕の決着を付けに行きます」

「傍にいてあげるよ。最後の最後、までね。何が遇っても」

「宜しくお願いしますね、マクドールさん」

「………ああ。共に…ゆこうね」

──そうして、少年達は。

目指すべき場所、ルルノイエ王宮へと向かう為、居合わせた大人達に背を向けて、歩き去り。

「あ、おいっ。待てよっっ」

最終決戦には端から付き合うつもりでいたビクトールとフリックは、それを追い掛け。

翌日。

後に、デュナン統一戦争と呼ばれる事になるこの戦いは、

同盟軍の勝利を以て、その幕を閉じた。