トトの村で紋章を継承して、そこからミューズの街に行くまでにも、色々遭ったんだけど。
シンダル遺跡で宝探しに燃えてたアレックスさんのお手伝いをして、都市同盟の盟主市っていう場所柄の所為と、ハイランドの侵攻の所為で、通行証がないと入れないって言われたミューズ市に、アレックスさん達の通行証借りて入ろうとしたら、ナナミの、とっっっっっ……ても下手くそな演技の所為で、又、牢屋に入れられることになっちゃって。
先にミューズに着いてたビクトールさん達が迎えに来てくれるまで、僕達はミューズの牢屋の中で過ごした。
──あの夜のお月様は、満月で。
ふって夜中に目が覚めたら、ジョウイは満月を見上げてて。
眠れないの? って訊いたら、確かあの時ジョウイ、この地に平和を齎すんだって決意をした……って……そう言った。
この戦いが終わったら、三人でキャロの街に帰ろう、そう言いながら。
この地に平和を取り戻す為の力となりたいって。
そう、ジョウイは言った。
…………あの時に見た、お月様を。
僕は今でも、忘れられない。
満月は、僕の中に今でも眠ってる。
ジョウイと一緒に夜空を見上げた時、ジョウイのこと想って空を見上げた時、満月のお月様は何時でも、そこにあったから。
僕には、お月様が忘れられない。
……そうして。そんな彼が、物凄く遠く感じたのも、僕は今でも良く覚えてる。
僕の向いている先と、ジョウイが向いている先が、違う……って。
そう感じたのを、とても良く。
けれど、僕はやっぱりジョウイに何も言えなくって、普通に普通に……それだけを意識して、迎えに来てくれたビクトールさん達と一緒に、ミューズ市長のアナベルさんに会って。
そうこうする内に、ジェスさんに、関所に駐屯しているハイランドの野営地に忍び込んでくれないかーって頼まれて、それ、受けることになっちゃって……。
結局それはばれて、ルカさんの妹のジルさんに会って、ラウド隊長にも再会しちゃって、ジョウイは僕を逃がす為に囮になる、そう言い出して。
待ち合わせの場所で、ジョウイは? って訊いているナナミの手を引いて、あの時の僕は、やっぱり…………やっぱり、逃げるしかなかった。
だけど。
ゲンカクじいちゃんのことで話が有るからって言ったアナベルさんに会う為に、ミューズ市庁舎へ行った夜、ジョウイがアナベルさんを殺す処を見る羽目になるんなら……何が遭ったのか、あの時には判らなかったけれど、ジョウイがアナベルさんを殺さなきゃならないようなことになるんなら、逃げたりなんて、するんじゃなかった…………。
──どうして。
どうしてジョウイは、アナベルさんを殺したの? どうして、罪もないアナベルさんを、殺さなきゃならなかったの? ……なんて、馬鹿みたいに何度も何度も考えながら。
ビクトールさんが、何処となくアナベルさんを想ってるんだって、あの二人を見てればそんなこと、僕にだって判ったくらいなのに、あんなに親切にしてくれたビクトールさんを悲しませるようなこと、どうしてしたの? とか。
ジョウイが人殺しになるなんて……とか。
色んなこと、沢山沢山、思いながら。
僕とナナミがアナベルさんを殺したんじゃないかって疑ったジェスさんに追われて、ミューズから逃げ出すくらいなら……五度目の逃亡……なんて、強いられるくらいなら。
例え、あの時僕が死ぬ羽目になったとしても、僕は、逃げ出したりするんじゃなかった。
ずうっとずうっと、一緒にいるべきだった、ジョウイと。
小さい頃から一緒だった僕達の見ている先が、少しずつ、ずれて来ているんだって、認めざるを得なかったとしても。