赤々と、激しく……とは言えないけれど。
燃え残りの薪はそれでも、相変わらずの爆ぜ音をさせながら、狭い洞穴の中を暖め、そして照らしていた。
だから、毛布を剥いだセツナの躰は、仄かに炎を写し取って火照り。
カナタからは、僅か逆光となる明かりに浮かび上がる、己が膝上のセツナを、カナタは何処となく不躾な眼差しで眺め。
つい……と、僅かに自身の膝を立てて、瞳に収めた躰を浮かせ。
滑り落ちそうになったのに怯えて、両の肩にセツナが手を付いて来た勢いに任せるように、目の高さに広がるセツナの胸を、舐め上げ始めた。
「……んっ…………。カ、ナタさ………っ……」
腰を、背を、掻き抱き、ぴちゃりと響きが沸き上がる程執拗な、カナタの舌に追われ。
両胸の、本当に細やかな膨らみを、唇に含まれ転がされ。
泣き始める時のように、セツナは顔を歪ませた。
カナタの肩に付いた指先を震わせ、食い込む程に爪を立て、洞穴の床……乾いた土に触れる脚を、ザリッと言う程、足掻かせ。
跨がる膝の上より、逃れようと彼は、身を捩った。
「どうして、足掻くの……」
「……だっ……て……っ……」
──ぞくり、そんな感じで生まれる快感を与える、しなやかで、繊細な指先で、背の肌を弄び。
滑りと『痕』と、痺れを生む、唇や舌先で、セツナの中心を目指しながら。
小刻みに震え始めたセツナを何処までも追い詰めつつ、カナタは囁いた。
すればセツナの面は、益々、泣きそうに歪み。
「……こんな、格好じゃ……僕……じっとしてる……しか……」
より深く、セツナの爪先が、カナタの肌へ食い込み。
快楽でしか有り得ない、その痛みの所為だろう、微かに瞳を細めてカナタは。
「…………それが、嫌? ……なら、キスして? セツナ……」
接吻を……と。
彼は、鈍く光る瞳を、恋人に向けた。
「……っ……」
…………言葉にすれば、多分。
欲望に染まった……と、そう例えるしかないカナタの瞳に見詰められ、息を飲み、セツナは。
促されるまま、恋人に、キスを贈った。
それは、何をどうしたらいいのかも判らない、『子供』のそれのような、辿々しい接吻だったけれど。
何時しか何かの境を越え、淫靡な音を放ち。
唇と唇の離れ際、濡れたカナタのそこへ、惜しむようにセツナは舌を這わせ。
うっとりとカナタは、セツナの行為に身を任せた。
「……あ……。ん……っ……」
──セツナよりのキスに、カナタが興じ。
カナタへのキスに、セツナが我を忘れても。
恋人を煽るカナタの蠢きは留まることなく。
止まらない蠢きを感じて、セツナは、掠れる嬌声を洩らした。
押し殺したような……耐えているような。
高いトーンの、嬌声。
……その声を切っ掛けに。
セツナの唇は、薄く、開かれたままになった。
「……セツナ」
背後から照る焚き火の炎に晒される、乗った滑りも露なそこが閉じられなくなったのを見て、セツナの肌を離れたカナタの右の指が、うっすら、唇をなぞり上げた。
そうして、そのまま。
指先を、セツナは含ませられる。
…………透明な、液が溢れ。
カナタの手を、滴る程に濡らすまで。
「……ふっ……う……っ……」
──己が口許も、射し込まれたカナタの指も、全て濡らして漸く許され。
セツナはほっと、息を洩らした。
が、その安堵も束の間。
自ら濡らした指が、自身の最奥をこじ開け始め。
「カナ……っ……。んっっ……」
判ってはいても、不意打ちだったその行為に、セツナは身を強張らせる。
「……何……?」
ひくり、と、奥を目指し始めたカナタの指飲み込み始めた『入口』を、彼は震わせ。
最後まで音にはならぬまま、恋人の名を呼んだけれど。
恋人から返されたのは、恍けたような応えで。
「あ……。あ、カナタさ……。そ……こ……っ。……あっ……」
…………何時しか猛った『欲』に、触れられもせず。
膝上にて、向かい合わせに抱き抱えられたまま、満たされるのは嫌だ……と。
底意地の悪い恋人へ、セツナは何とかでも、訴えようとしたが。
奥を弄び始めた指先は、何も彼もを知り尽くしている蠢きを見せ。
訴えを、何一つとして形に出来ぬまま。
セツナは躰を、強く仰け反らせた。