「可愛いね。本当に可愛いよ、君は」

目尻に涙を滲ませる程笑い転げた後。

そう言ってカナタはギュッと、セツナを抱き締めた。

「外見は十五でも、中身は百十五歳のおじーちゃんが、可愛いって言われても喜べません」

だから、プッとセツナは頬を膨らませて。

「拗ねないの。幾つになろうとも、可愛い人は可愛いのだから。況してや君なのだしね。例え、億年の歳月齢を重ねても、僕にとって君は、何時までも可愛い君だよ」

機嫌を損ねた風なセツナを、カナタは一層強く、抱いた。

「…………ね、セツナ」

そうして、暫く。

カナタは抱き締めたセツナの感触を、夕日の朱色さえも褪せ始めた窓辺にて、確かめていたが。

やがて、低く静かに、呟き。

「……何ですか?」

「共に、ゆこうね」

「…………はい。──カナタさん?」

「ん……?」

「幸せに、なりましょうね……」

あの頃、セツナに己が手を取らせた決定的な一言を、百年の時を越えて、改めてカナタは告げた。

すればやはりセツナは、もう数え切れぬ程繰り返した応えと、『彼自身の口癖』を呟き。

「愛しているよ。君だけを、ありとあらゆる意味で。──何時か約束したように。僕達は共に在って、生の果てにあるだろう場所を目指すのだから。怖がらなくてもいい。怯えなくてもいい。僕が君の手を離すことなんて、未来永劫、有り得ない」

…………カナタは……行為を求める言葉の代わりに、そっと、開け放たれた窓を閉め、カーテンを引いた。

急に薄暗くなった室内の意味に気付いて、セツナはより俯きを深めたけれど、キュっとカナタの上着の胸許を掴んで、応えと成し。

よいしょ、と、ふざけた感じでセツナを抱き上げ、堅く躰を強張らせている彼を、カナタは丁重に、ベッドに横たえた。

「セツナ、君は何も、知らなくていい。それを君に教えるのは、僕だから。──大丈夫、耐えられないと思ったら、逃げていいよ。君が嫌がることなんて、僕はしないから。……但……それでも一つだけ、願うことがある」

きつく瞑った瞼も開けられず、舌の根を動かすことも出来ず。

頑に息を詰めるセツナの髪を優しく撫でて、心配ない、とカナタは言った。

「……お願い……ですか……?」

「そう、願うこと。────僕を、信じて?」

低く囁けば、漸くこじ開けた瞳を向けて来たセツナへ、信じて欲しい、それが望みだとも言って。

縮こめられたセツナの両の手首を、ベッドへと張り付けるように、掴み押し付け。

小柄な躰に被さって、カナタは、セツナに一つ、キスを与えた。