何時からか。
『熱』ばかりを求めるようになった。
『大切』なこの子の、間違っても逞しいなどとは言えない躰に。
『熱』、ばかりを。
──何故そんなことをしてしまうのか、己にも理解出来ていない訳ではなく。
この子を求める余りに自制も効かない、ということでもなく。
何故そうするのか、どうしてそうしてしまうのか、その源は、掴み得ている。
──この子を、『征服』してしまいたかった。
だから、そうした。
この掌の中に確かに、掴んでしまいたかった。
だから、手を伸ばした。
──『何も彼も、全てのことがどうでもいい』と思える、『世界』の中で。
この子にだけは自ら、望むことがあった。
そうして確かに、『望んだ』。
しかし、それさえも。
心の底からこの子を求め、自ら望み手を伸ばした、この現実さえも。
『どうでもいいこと』だった。
その筈だった。
その筈、だったのに………………。
崩れて行くのが判る。
少しずつ、少しずつ。
崩してしまう訳にはいかないというのに。
それでも何かが、音を立てながら、少しずつ、少しずつ。
──留まることは叶わず。
崩れ切ることも叶わず。
『手放す』ことなど、到底。
古き百年が去り、泡沫のような境界線を越えて。
新たに始まった、これからの百年。
何事もなく、これまでのように、唯、滔々と刻のみが流れて行くのだと……そう、信じようとしていたのに。
信じられる……筈だったのに。
僕の犯した罪は。
あの、黄金の都にての夜、魔法の呪文を囁いた、そのことのみの筈だった。
それ以外、犯した罪は、僕にはなかった。
けれど、僕は。
『全てが始まったあの時』から、罪に塗れていたのかも知れない。
……いいや。
始まりの、あの時から。何も彼もが全て。
全てが罪で。何も彼もが、過ちで。
……ああ、いいや、いいや。
それさえも、判り切っていた筈のことだった。
何も彼もを承知の上で、僕はこの子と共に、この百年を生きて来た。
全ては、僕が、僕自身で選んだ道行き。
────なのに、何故。
何故僕は、今になって。
涙を流したい、と。
そう思うのだろう。