それでもやっぱり、僕は。

何一つとして、後悔なんてしてない。

全ては僕が、望んだこと。

僕は最初から、何れはこうなるんだってことを、ちゃんと知っていたんだから。

それなのに、全てを選んだのは、僕自身なんだから。

……悪くないんだよ。

カナタさんは何にも、悪いことなんてしてない。

そうしてゆかなければ、カナタさんが生きていけない、そう言うなら。

僕はそれでいい。

それだけで、充分。

──だって、そうじゃない。

カナタさんは最初から、遥か遠い彼方だけを見ていた。

僕は最初から、刹那の時だけを見ている。

例え、カナタさんの見ている先が、僕には見えない、僕の姿は何処にもない、遥か彼方にあっても、刹那を見ている僕には、僕の隣に寄り添ってくれる、カナタさんの姿が見える。

……些細なこと、なんだよ。

カナタさんは僕を、只のタカラモノとして、只の灯火として、見ている。

僕はカナタさんを、最愛の人として見ている。

僕達の違いは、それだけでしかない。

例え僕が、カナタさんの最愛の人にはなれなくても。

カナタさんの大切なモノである僕は、カナタさんの優しさも、慈しみも、『愛情』も、惜しみなく注いで貰ってる。

だから僕は、幸せだよ。

カナタさんと一緒に、『幸せ』になる為に、歩いているよ。

──それだけのことじゃない。

それっぽっちのことじゃないか。

僕が、僕の想いに、僕の恐怖に、蓋をしてしまえば済むことだもん。

永遠に、その扉を。

僕が開かなければいいだけのこと。

……それだけのことだよ。

たった、それだけの。

…………何にも悪くないよ。

カナタさんは何にも、悪いことなんてしてない。

僕が、如何なる形であろうとも、カナタさんの傍にいれば、カナタさんが『痛くない』って、そう言うなら。

僕は、それだけでいい。

だって、僕は確かに『愛されて』いて。

僕はそれで、『幸せ』なんだもの。

…………でも、何で?

何で、なのかな。

カナタさんは、何一つとして、悪くなんてないのに。

僕は、『幸せ』なのに。

どうして、かな。

……どうして、僕の瞳からは。

涙、なんてものが……何時までも、何時までも、溢れ続けるんだろう…………。