晴れて、互い想いが通じ合って。

接吻くちづけなるものも、経験して。

ユインにしても、カーラにしても、恋人という存在を得たのは初めての経験だったけれど、それでも、ユインはカーラを、カーラはユインを、己の恋人、という地位に据え……、としてみたら、ミューズにて、ハイランド皇王となったジョウイと再会した辺りから、ずっとカーラが抱えていた悩み──正確には、思い込み──も、一緒に片付いてしまった。

「そうだ、カーラ。あのね。実は、例のムクムクの八つ当たり。ひょっとしたら、ここの処カーラがふさぎ込んでた理由と繋がるのかなって、僕はそう思ってたんだけど。そうじゃなかっただろう? だから、教えて? 君はここの処、一体何に対してふさぎ込んでたの?」

告白をし合って、キスをして、暫くの間二人は、落ち着かない様子を見せ合っていたのだけれど、やがて、ふと思い出したのか、ユインが、首傾げつつそんなことを言い出したので、カーラは、あー……という顔をしながら、ボソボソ、ミューズより帰還してからこっち、ずっと抱えていた鬱積の話をユインに打ち明けた。

貴方のことが好きで、貴方と一緒に居られるならいっそ戦争が終わらなくてもいい……、なんて思ってしまうことすらあって、だからミューズでジョウイに降伏を迫られた時、貴方と一緒にいたいと思う余り、自分はしなくちゃならなかった努力を仕切れなかったんじゃないか、という話を。

「………………もしかして……、だからティントでも、あんなに必死になって、盟主とか、『救い主様』とかで在ろうとしたの……?」

と、その話を聞き終えた途端、ユインは目を丸くし。

「……ええ、まあ、多分…………」

バツが悪そうに、カーラは囁き。

「…………えい」

ふざけた掛け声と共にユインは、ぼそっと言った彼の脳天に、手刀を落とした。

「痛っっ……。……ユインさん、痛い…………」

「当たり前。痛いようにやってるんだから。…………ホントに。どーしてそんな馬鹿なこと考えるんだろうね、カーラは。──ジョウイ君と対峙してた時に、僕のことが好きだとかどうとか、カーラ、そんなこと考えながら返答してた訳じゃないだろう? ちゃんと、皆のことととか、この軍のこととか、考えてたんだろう? ……大体ね、好きな人と一緒にいられるならって、そう思うことがあったとしたって、本当に、何時までも戦争が続くことを望む人間なんて、ルカ・ブライトみたいな類いの奴等だけだよ。だからもう、そんな馬鹿なこと考えない。……いいね?」

「…………はい」

「実際問題、贔屓目ってのを抜かして見ても、君はこの軍のトップとして、良くやってると思うよ。だからもう、自分ばっかり責めるのは無し。責任感じ過ぎて、輝く盾の紋章使い過ぎるのも、無し。いい? ……はい、返事は?」

「……判りました。気を付けるように……します」

「…………うん。カーラがどうしてもその紋章を……って、そう言うなら、僕もその気持ちは汲むけど。ティントでのあの時言ったみたいに、その紋章は、その……ね、厄介、だから。お願いだから、気を付けて。カーラがそれを使わなくて済むように、僕も頑張るし」

ビシリと頭に一撃をくれてやったら、むぅっとカーラは膨れてみせたけれど、意にも介さずユインが小言を続けたら、彼は大人しく、それを受け入れた。

そうして彼等は、恋人同士になったことによって、ここの処ずっと、同盟軍の面々が、落ち込み気味の盟主殿を一体どうしたらいいのか、とブツブツ零し続けていた問題をも片付け、ユインにも、カーラにも、同盟軍の城内にも、心穏やかになれる日々が、戻って来たのだが。

それは余り、長くは続かなくて。

二人が想いを確かめ合って、何日かが過ぎた頃。

該当する二人に置き換えて表現するなら、少しずつ、キスの際のぎこちなさが、彼等から消え始めた頃。

『一寸した』事件が起きた。