見るからに、それこそ、何処からどう見ても。

幸せそー……に、運ばれて来たばかりのホットケーキをパクついている、盟主の少年と。

幸せそうに食べるのは良いが、皿から溢れんばかりに蜜ぶっかけるのは止めないか、見ている方が胸焼けするから、と、それを目撃した者達は呟きたくなった程に、甘ったるそうなそれをパクつく少年を、これ又、幸せそー……に眺めている、英雄である彼は。

本拠地一階広間から移動し落ち着いた、レストランの片隅で、周囲の目も気にせず、再び、自分達だけの世界を展開していた。

レストランに姿見せるや否や、

「えーっと。あ、マクドールさん。あっちの隅っこ空いてますよ」

「あ、じゃあそこにしようか。良さそうな場所だし」

「そうですねー。二人でのんびり出来そうですしねー」

……とのやり取りを交わし。

手を繋いだまま、レストランの中央を横切って、向かい合わせに座ればいいものを、わざわざ隣り合わせて腰掛け、ぴっとり寄り添い。

「何にしましょうか」

「君は何が飲みたい? 珈琲? 紅茶? それとも、ココアとか? どれでも付き合うよ」

「えーーーーっと…………。んーと。あー……。そうですね……。ホットケーキが食べたい気分なんで、僕は紅茶にしようかな……。でも、マクドールさんは珈琲の方がいいんじゃありません?」

「いや、いいよ。君が紅茶が良いって言うなら、僕もそれでいい。ホットケーキも、付き合おうかな」

「そうですか? なら、紅茶二つとホットケーキ二つ、頼みましょっか」

盟主殿と英雄殿の二人には、至極当然でしかない過程を踏んで、注文を果たし。

それ程の時間を置かずにやって来たおやつ達に、顔を綻ばせながら。

片方──見た目で言うなら、年下のちんまい方は、三段重ねの、分厚いホットケーキをいそいそ切り分けつつ、いそいそ口に運びつつ。

片方──やはり見た目で言うなら、年上のでっかい方は、二段重ねの、蜜控え目なホットケーキを、それなりに摘みつつ。

ベタベタの世界を、繰り広げ続けていた。

「美味しい?」

「はい、すっごく! ハイ・ヨーさんのホットケーキは、もう、ふわっふわで、口の中入れると溶けちゃいそうで、とっても美味しいですよー」

「良かったね」

「ええっ! ……あ、でも考えてみたら、昨日もおやつ、甘い物でしたね。今日は、違う物の方が良かったかもですね。ずーっと、僕の好きなおやつにばっかり、付き合って貰っちゃってる気がする…………」

「ん? ううん、そんなことないよ。僕も甘い物、嫌いじゃないし」

「……そう言って貰えると、安心ですけどー……」

「気にすることないってば。……ああ。食べるのと喋るのと、一遍にやると、汚すよ? ほら、付いてる」

「え? ……あ、有り難うございますー」

…………ベタベタの世界を展開している彼等の交わす会話は。

やはり、ベタベタなそれで。

ベタベタな世界で交わされた、ベタベタな会話と共に。

懸命におやつを食べる余り、口の周りを蜜で汚してしまった少年の頤を、隣の彼が、指先でチョンと持ち上げ、取り上げたナプキンで、口許を拭ってみたりとか。

そうして貰った少年が、ちょっぴり恥ずかしそうにしながら、けれど嬉しそうに、応えてみたりとか。

そんな彼等の様が、レストランの片隅では、ずーーーーーー……っと、ひたすら展開され、その後。

緩いペースで進めたおやつタイムを漸く終えて、彼等は席を立ち、又、何処へと消えて行った。

「…………ナナミちゃん」

だから、彼等がレストランを後にして、暫し後。

たまたまその時、レストランの、彼等がいた片隅とは反対側の片隅にいた、ニューリーフ学園の女学生、ニナは、一緒の席でお茶をしていた、少年の義姉を呼び。

「彼の義姉あねとして……どう思うワケ?」

と、素朴な疑問をぶつけた。

「………………どう思うか……って……」

仲の良い、ニナに。

率直に問い掛けられて、ナナミは。

「……あの二人が、本当はどういう関係か、なんて、私は知らないけど。何がどうだって、私は別に、どうだっていいよ。……だってもう……」

「……もう?」

「諦めてるもん、私」

溜息と共に、一言。

仲良しである彼女へ向けて、そう言い放った。