禁断の恋愛10題 +Ver.A+
5. この暖かさもいつかは…
もう、塵程のことも、我慢など出来なかった。
想いの全て、心の全て、止められなかった。
変わっていく自分も、止めようがなく。
止めよう、とも思えなくなった。
『…………御免ね』、その一言を、その時、僕の眼前にはいなかった君へ捧げたのが、僕の最後の良心だった。
『…………御免ね』、その一言が。
僕が君へ贈る、最後の『愛』だった。
…………何も彼も、全て。
僕は忘れることにした。
だから、愛しているよ、と、君を捕まえて、その耳許で囁いた。
初めてそれを囁いてみせた時は、困惑しきりの態度しか見せなかった君へ、幾度も、幾度も。
愛しているよ、僕は君を愛しているよ、と。
君がそれを受け入れてくれるまで、何度も何度も。
ひたすらに、優しく。
──そうしていたら君は、甘やかには聞こえるだろう僕の言葉に絆されたように、僕の『愛』を受け入れてくれて。
始めの囁きの時から、少しばかりの時を経た頃、君は、僕の物になった。
……僕の想いの何処にも、嘘偽りはないよ。
毛筋程も僕は、己の想いを偽ってはいないよ。
…………愛しているよ。
僕は、君だけを愛してる。
君が僕の傍らにいてくれれば、僕はそれでいいよ。
君の温もりはこの手の中にあって、その暖かさは『あれ』以来ずっと、僕の胸許にあって。
幸せだと、そう感じられるよ。
……但、こうやって、僕は君を愛してしまって、君も僕を愛してくれたから、そう遠くない未来、君はこの世の『不変』に従い、その魂を紋章に飲まれて、僕の前からも、世界からも、消えてしまうのだろうけれど。
今はここにある、この暖かさも何時かは、冷たい紋章の中へと、溶けて逝くのだろうけれど。
……もう、それでもいい。
何れはそうなると判っていて、僕は君を愛した。
そうなるだろうと知っていて、君に愛を囁いた。
例え君を、『殺す』ことになっても。
僕は君を、愛したかった。
この暖かさが何時か、僕の前から消え去っても、僕の右手の中で君は生き続けると、そう思い込むことの出来る僕でもあるから。
……御免ね。
僕の愛は、死神の愛だ。
僕達の愛は、死へと向う道程だ。
…………御免ね。
それでも、僕は。
君を愛しているよ。君を愛し続けるよ。
もう、決めたんだ。
例え君を『殺す』ことになっても、僕は君を愛するって。
End
後書きに代えて
……ドドメ色に暗い……。
カナタと、余りにもタイプが違い過ぎる坊ちゃんで、書いてる私が戸惑いそう(笑)。
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。